インタラクティヴパネルがパリの地理と人間関係を整理する〜ブリヂストン美術館「カイユボット展」

 ブリヂストン美術館で「カイユボット展」を見てきた。あまり期待していなかったのだが、展示の仕方に工夫があり、楽しめた。

 ギュスターヴ・カイユボットの絵画自体は写実的な印象派という感じで、マネっぽかったりモネっぽかったりルノワールっぽかったり、そこまで独創性は感じない絵も多かったのだが、タッチよりはむしろ構図の面白さが特徴かなぁと思った。弟マルシャルは絵ではなく写真をやっていたらしいのだが、ギュスターヴの絵も「決定的瞬間」っぽい構図が多く、タッチがそこまで個性的でなくても「おっ?」と思うような独特の切り取り方をしている絵がけっこうあるのでそこが良かったと思う。

 さらに面白いのはインタラクティヴパネルが多数設置されていること。パリの街角を描いた絵の部屋には床にパリの地図が描かれており、それぞれのポイントにタッチパネルがあって、どのポイントでどの絵が描かれ、今はどういうふうに変わっているかが画像で見られるようになっている。印象派のコレクターで画家の支援者として名を遺したカイユボットの人間関係を可視化するためのSNSみたいなタッチパネルもあり、カイユボットを中心に、カイユボットがたくさん絵を買った画家ほどデカい絵で表示されるネットワーク図があったり、どれくらいカイユボットがある画家にお金を払ったかわかるようになっていたり、芸術家のネットワークとかに興味がある人にはたまらない面白さだ。こういうインタラクティヴパネルが充実しているおかげで、印象派好きだけではなく、19世紀の社会とかパリの文化史みたいなことに興味ある人も楽しめるものになっていると思う。