新装開店、第一次世界大戦展示が充実したロンドン帝国戦争博物館

 ずーっと改装で閉館していたが、第一次世界大戦展示をパワーアップさせて新装開店したばかりのロンドン帝国戦争博物館に行ってきた。改装前に行った時の記事はこちら

 メインロビーは相変わらず、飛行機や車の展示。



 戦場報道車両。

 これは第二次世界大戦のロンドンの一家の暮らしぶりを再現するもの。実際に博物館につとめていた職員の祖先の家庭らしい。

 ヒトラーおばけ。エアガンの標的にするらしい。



 他にもいろいろな戦争の遺物が展示されている。



 ボロボロのゼロ戦と、インパールで亡くなったと思われる日本軍兵士が持っていた国旗。

 これはちょっとわかりにくいが、日本軍占領下の香港で働かされていた看護婦、デイジーさんがこっそりシーツに縫い込んで作った日記らしい。

 英国軍が日本軍降伏の証として接収した軍刀。ただし全部が全部接収されたものではなく、捕虜の丁重な取り扱いに対する感謝とか、とりなしを願うみたいな感じで将校自ら軍刀を英国軍に献上することもあったらしい。

 フォークランド紛争のコーナー、『スピッティング・イメージ』によるサッチャーカリカチュア

 トニー・ブレアを諷刺する反戦ポスター。これ、安倍でもやりたい。ティーカップを茶道の茶碗にすればすぐ作れそう。

 勲章ギャラリー。南アジアの兵士なども登場する。

 ヴィクトリアクロスは戦場での手柄に、ジョージクロスは戦場以外での武功に与えられる勲章だそうで、現在では女性もヴィクトリアクロスをもらうことができるが受賞者はまだいないらしい。どうも生きて勲章をもらって帰るのは大変難しいらしく(統計とかはなかったのだが、それぞれの勲章についていた解説によると、かなりの場合、死後に遺族に勲章が渡されていた。ただしヴィクトリアクロスは最初は生存者のみだったらしい)、またまた生還してもほとんど死ぬような目にあって日常生活に支障をきたすレベルの後遺症が残っている場合(手足を失う、毒ガスによる後遺症、シェルショック等)が多いようだ。

 第一次世界大戦ギャラリーは大混雑で、整理券を配っていてタイムスロット制で入場する。


 こういう感じのタッチパネルが多数設置されており、興味のあることについては自分で選んで学べるようになっている。第一次世界大戦が始まった頃、大英帝国臣民の2人に1人くらいはヒンドゥー教徒だったらしい。

 塹壕のモデル。ただ、塹壕は改装前のやつのほうが狭くて臭くてそれらしかったような…

 食料関連業務のため若い女性を募集するポスター。食べ物を「女性の仕事」とジェンダー化することで愛国心を煽るのですな。

 これは負傷者、とくに毒ガスなどで顔をやられた兵士がつけるもの。義手や義足の顔版というべきか。かつてなら死亡していたような負傷者が医学の進歩で命だけは助かるようになったのだが、後遺症を解決するところまではなかなか至らなかったので、一生続くような障害や痛みに苦しむ退役兵が多数、出てきたらしい。

 第一次世界大戦後のアイルランドについても少しだけ展示が。

 第一次世界大戦中、政府は貯金を奨励した…という話にかこつけて寄付を募る帝国戦争博物館

 こういう展示を見ていると、第一次世界大戦がヨーロッパ、とくに英国に与えた強い影響がわかって面白い。英国に限っては第一次世界大戦のほうが第二次世界大戦よりも戦死者が多いそうで、塹壕戦で精神的にやられて…という話も広く流布しているので、日本人が普通に考えるよりもかなり第一次世界大戦が強く英国人の記憶に残っているようだ。ただ、「帝国戦争博物館」のわりには南アジアやカナダなどの兵士についての展示が物足りないし、第一次世界大戦ギャラリーも非常に力が入ってはいるが捕虜や政治的駆け引き、植民地の兵士については解説が足りない感じだった。あと、第一次世界大戦ギャラリーが大幅に増えたせいで、前に出していた第二次世界大戦ヒトラー諷刺ポスターコレクションとかおもしろおかしい展示品が少なくなり、全体的に暗い感じになったのが改装の特徴かも。ただし、英国の「反省しない」感はすごい…これは直前に(おそらく世界で一番、反省したと思われる)ドイツに行っていたせいかもしれないが、全体的に帝国戦争博物館の展示は全然、帝国の汚点を反省してねーだろ!!というツッコミを入れたくなるところがあった。