ジャスティン・リン監督『スター・トレック BEYOND』(サイトが音の出るうるさい作りでダサいので注意)を見た。いろいろなことが起こるのだが、まああらすじを手短にまとめると、カーク(クリス・パイン)とエンタープライズ号のメンバーが持っている歴史的な兵器の遺物をテロ集団の親玉であるクラール(イドリス・エルバ)が狙っており、クラールの生物兵器テロを防ぐためにクルーが戦うという話である。
全体としては楽しいアクション映画である。とくに(ネタバレ注意!)クラールの一味の弱点が通信の脆弱性だと知ったエンタープライズ側(エンタープライズが破壊されたせいで、この時はフランクリンという旧式の宇宙船に乗っている)がラジオでビースティ・ボーイズの「サボタージュ」を大音量でかけて敵機を破壊するところは前々作のネタをうまくひっぱっていて面白い(兵器として音楽を利用するというのはちょっとどうかと思うところもあるが)。ちなみにこれ、やってることは『マーズ・アタック!』とほとんど同じに見えるのだが、技術的な理屈をちゃんとつけているせいで『マーズ・アタック!』ほどおバカに見えず、ちょっとロジック重視のオタク趣味を感じる。たぶん脚本にサイモン・ペグが関わってるせいではと思う。
ただ、終盤のクラールの正体がわかってからはちょっと展開がぶっ飛ばしすぎて強引さがあるので、そこはもうちょっと丁寧に整理しつつ理屈をあわせたほうがよかったのではと思う。全体的にクラールまわりがちょっと端折り気味で、テロ組織に脅されているカララの描き方とかも他に比べると雑な感じがする。しかしこの映画も『インフェルノ』も、テロリストが生物兵器を用いて住民皆殺しを企むという展開なのだが、最近はそういうのが流行ってるんだろうか…まあ、『スタートレック BEYOND』のほうが『インフェルノ』よりはだいぶよくできていると思うのだが。
キャラクターの面白さは前二作同様で、スポック(ザカリー・クイント)とボーンズ(カール・アーバン)が不時着した惑星で憎まれ口をたたき合うダイアロークや、スコティ(サイモン・ペッグ)とジェイラ(ソフィア・ブテラ、新登場で良いキャラである)の技術屋同士の会話なんかにユーモアがある。レナード・ニモイが撮影前に亡くなってしまったのと、またメインキャラであるチェコフ役のアントン・イェルチンが撮影後に急死して次回作から出演できないのは非常に悲しいことである。チェコフとスールーのツートップは、訛りまくった英語を話すロシア男と東アジア系が一緒に船を動かすということで、すごくカッコいいし訛った英語を話す東アジア系の観客としては凄く元気が出る組み合わせだったのだが、もう見られないのはとても残念だ(ちなみにヨークタウンの場面でスールーの彼氏と子どもがちょっとだけ映る)。女性登場人物は皆ちゃんとキャラが立っているのだがお互いに話す場面があまりなく、ベクデル・テストをパスしないのが残念だ。