レズビアンのライサンダーとハーミア〜青年団リンクRoMT『夏の夜の夢』

 青年団リンクRoMT『夏の夜の夢』を見てきた。

 中に電灯を仕込んだ木が中央部に一本立っており、それ以外にはゴミ袋のような黒いバッグが奥の角に積んであるシンプルな舞台で、役者はだいたい現代の服装である。特徴は女優が多いことで、クインス、スターヴリング、フィロストレートあたりが女性というのはまあ見かけると思うのだが、このプロダクションではライサンダーも女性である。しかも「女優が男性を演じる」のではなく「女優が女性を演じる」ようになっている。

 ライサンダーとハーミアをレズビアンカップルにするのは、試みとしては大変面白いがいまいち細かいところの作り込みが足りないという印象である。ライサンダーを演じている石渡愛は悪くないのだが、もうちょっと演出で一貫性を持たせないとダメではという気がした。ハーミアはスカートにメガネ、ライサンダーはズボンの衣装なのだが、2人ともそこらにいる親しみやすい若い現代女性という感じなのに、ハーミアはもともとの台本どおりの女言葉、ライサンダーは男言葉でしゃべるので、かなり違和感がある。この衣装でやるんならライサンダーとハーミアには同じような現代女性っぽい話し方をさせないといけないだろうし、台詞をそのままにするならライサンダーはめちゃくちゃブッチな感じ、ハーミアはフェムな感じの衣装を着せないとダメだろう。おそらく後者の解決方法のほうがいいと思われる…というのも、パックはディミートリアスライサンダーを間違って恋の薬を盛ってしまうので、ライサンダーはできるだけディミートリアスと間違えられそうな衣装にしたほうがいい。さらに、そうすることによってハーミアがディミートリアスよりも過剰に「男らしい」ライサンダーに心惹かれ、それに家父長イジーアスが不安を覚えているというふうになってクィアで諷刺的な面白さが添えられると思うので、ライサンダーの衣装はこれでもかというほどオトコオトコしたものにすべきだったと思う。
 あと、このアテネの世界観で同性愛がどう位置づけられているのかにもイマイチはっきりしないところがあった。イジーアスがテーセウスに、娘が女に心を奪われたと打ち明ける時、一応ちょっとテーセウスがビックリするのだが、そのわりに最後は何の驚きもなくライサンダーとハーミアが同性婚しており、この世界観では同性のカップルがどのくらい広く認められているのか想像しづらい。このへん、もうちょっと設定を詰めるべきだったのではと思う。

 終盤は笑いが多く、とくに職人たちのアマチュア演劇をひどくもったいぶったものとして演出しているのは良かった。たいていのプロダクションでは、ピラマスが長々と死んだ後シスビーがビックリするほどすぐ死ぬと思うのだが、このプロダクションではシスビーがいきなり歌舞伎みたいな見栄を切ってこれでもかこれでもかというほどしつこく死ぬので、あまりの過剰さに笑ってしまった。