夏のゾンビは三度微笑む〜『カメラを止めるな!』(ネタバレあり)

 『カメラを止めるな!』を見てきた。こんなタイトルの映画は正直見る気になれなかったし、私の苦手な手持ち撮影が多そうなので躊躇していたのだが、あまりにも評判が良かったので見に行ったところ、大変面白かった。手持ちも最初の30分くらいで終わるのでなんとか耐えられる。

 あまりネタバレしないほうが良い作品なのであらすじについては詳しく解説しないが、ゾンビ映画を撮影しているクルーの話で、良くできたバックステージものである。「この映画は二度はじまる」というキャッチコピーがついているが、全体としては綺麗な三部構成になっており、むしろ三度微笑むと言ってよいのではと思った(第三部は微笑むというよりは爆笑)。舞台だと上演中にいろいろトラブルが起きるみたいな展開はよくあるし(クレジットにもあるように舞台が原案らしい)、生放送のトラブルという点では『ラヂオの時間』という先行作があるので話としてはあまり新しいわけではないと思うが、映像を使った仕掛け方がうまい。今、実は来学期の授業で扱う戯曲版『そして誰もいなくなった』を検討しているのだが、映像ではできても舞台ではバレてしまうトリックというのがたくさんあることがわかってビックリしていたところなので、この映画を見ていて映像の力というのはすごいなと思ってしまった。ちなみにクレジットで原案が舞台だという表示があったので、そんな芝居があったのか、今度その劇団を見てみようと思って調べたところ、既になくなっていた…のだが、そう思っていたところに舞台を作ったクリエイターとの間でトラブルが発生しているというニュースがあった。

 なお、この映画はおそらくベクデル・テストをパスするのではと思うのだが、かなり微妙である…というのも、冒頭の映画内映画で女優をメイクさんが励ますところがあるのだが、これはかなり短い会話で脇に男性が立っているし、また映画内映画の台詞だ。また、顔合わせの場面で赤ちゃんについて女性同士が会話するところもあるのだが、これは赤ちゃんの性別がよくわからなかった。