ロッキー、お前のそういうとこだぞ~『クリード 炎の宿敵』(ネタバレあり)

 『クリード 炎の宿敵』を見てきた。

www.youtube.com

 ロッキー(シルヴェスター・スタローン)のもとでどんどんボクサーとしての力を上げたアドニスクリード (マイケル・B・ジョーダン)は、とうとうヘビー級チャンピオンに上り詰め、ビアンカ(テッサ・トンプソン)との結婚も決まって幸せだった。ところがロッキーとアドニスの父アポロの宿敵であるイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の息子ヴィクター(フローリアン・ムンテアヌ)がアドニスに挑戦してくる。ロッキーはアポとを死なせたトラウマでセコンドを引き受けられず、調子が狂ったアドニスはヴィクターにブチのめされてしまう。ヴィクターが反則で失格になったせいでチャンピオンの地位は保てたが、大けがをしてボロボロになったアドニスはなかなかボクシングを再開する気になれない。アドニスは立ち直れるのか…

 

 前作『クリード』に引き続き、アドニスやロッキーのキャラクターをきちんと描いて引き締まった話にしている。アドニスは前作よりも人生経験を経て繊細になった印象で、どん底から立ち直ってリングに返り咲く様子が丁寧に描かれ、クライマックスの試合シーンはすごく盛り上がる。一方でヴィクターとイワンの関係はちょっと薄い気もするのだが、最後に元妻が去って行く様子を見たイワンがヴィクターに「もういい」と言うところの精神の変化の描写はなかなか来るものがある。ここでイワンがタオルを投げるのは、彼があきらめを学んで成長したということだ。

 

 ちなみに私はこの映画を見る前に、未見だった『ロッキー』の2からザ・ファイナルまでの5本を3日くらいかけて見たのだが、全体的にロッキーは映画史上の残るよく描けたヒーローではあるのだが、ボクシングのこと以外は何も知らなくてかなり世間知らずであり、この点については全シリーズを通してあまり成長していない。そしてこの作品内でも、いやいやロッキーそれは世間知らずすぎるだろ…というところがある。ロッキーが、赤ちゃんがいるアドニスを家族から引き離し、砂漠の真ん中にあるジムに長時間拘束して訓練するところがあるのだが、息子に出ていかれたのはお前のそういうとこだぞ…と思った。母親で仕事もしているビアンカに大変な迷惑だし(メアリー・アンがいるしシッターも雇えるかもしれないけど)、いい父親になりたいと思っているアドニスの精神にも良くないはずである(練習の合間にスマホで赤ん坊の顔を見るアドニスがかわいそうだ)。アドニスが勝ったからいいようなものの、負けたらたぶんこれ育児ストレスがひどいビアンカが爆発して離婚だと思う。ロッキーは家族関係についてはなかなかのダメ男である。まあ、そこがリアルさを醸し出しているというのはあるのだが。

 

 なお、この映画はベクデル・テストはパスしない。ビアンカとメアリー・アンが話すところはあるが、ほとんどアドニスについてだ。