カンフーする『ザ・コミットメンツ』~『ノーザン・ソウル』

 『ノーザン・ソウル』を見てきた。

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 舞台は1974年のバーンズワース。パッとしない毎日を送るジョン(エリオット・ジェームズ・ラングリッジ)はたまたま行った若者クラブでブラックミュージックが大好きでオシャレなマット(ジョシュ・ホワイトハウス)に出会う。2人でノーザン・ソウルのDJとして新しい道を切り開こうとするジョンとマットだが、態度のデカいマットととにかく真面目に音楽をやりたいジョンの間にだんだん軋轢が…

 

 だんだんジョンとマットの道が別れて行ってしまうところをほろ苦く描きつつ、最後はちゃんと友情の話としてきちんとまとめている。70年代の空気感もいい。『モダンライフ・イズ・ラビッシュ』では本当にどうしようもなかったジョシュ・ホワイトハウスもこの映画ではかなりよい(図々しくて自分ではフロアを盛り上げてると思ってるけど実はダメというあたり、キャスティングがピッタリだ)。ベクデル・テストはアンジェラ(アントニア・トーマス)が他の友達とドラッグなどの話をする場面でかろうじてパスすると思う。

 

 面白いしよく出来た映画だと思うのだが、全体的には貧しくて抑圧されたブリテン諸島の若者たちがカッコいいソウル音楽をやろうとする、っていう話なので『ザ・コミットメンツ』に似てる。なんというかあのレベルに達するには(イングランド北部が舞台だからなのか)ちょっとユーモアが足りない…というか、私が『ザ・コミットメンツ』がめちゃくちゃ好きなのでつい比較してしまってあんまりピンとこないのかもしれない。ただ、スティーヴ・クーガンが先生役で出てくるところはなんとなくおかしい。ちなみにこれは2014年の映画で(つまり『シング・ストリート』より前)、なんでそれが今頃公開…というのはちょっと思った。どういう経緯で買い付けたんだろう?

 

 ひとつ面白いのは、ジョンやマットがブルース・リーに憧れていてカンフーっぽい動きをダンスに取り入れているところである。東アジアの格闘技の身ぶりとアメリカのブラックカルチャーの身ぶりがなんとなく混戦してしまうというのはカール・ダグラスの「カンフー・ファイティング」とか映画の『アイアン・フィスト』を思わせるのだが、あれはなんで起こるんだろう…というのは見ていてちょっと思った。抑圧をはねのけるためのきっかけとしてつながるんだと思うけど。

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