リラックスして見られる楽しい翻案~『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』(ネタバレあり)

 世田谷パブリックシアター三谷幸喜『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』を見てきた。

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 ホームズ(柿澤勇人)とワトソン(佐藤二朗)が同居しはじめた直後、『緋色の研究』前でホームズがまだ素人探偵だった頃を描いた二次創作である。ホームズは若く、ワトソンがけっこう年上であることや、ワトソンに妻のヴァイオレット(八木亜希子)がいることなどがポイントだ。弟に対して過干渉気味のマイクロフト(横田栄司)がいろいろトラブルを起こす。

 

 全体としては肩の力を抜いて気楽に見られる楽しい作品だ。いろいろ小ネタも入っており、かなりホームズの作品を読み込んで作られていることがわかる。役者陣もみんなリラックスして楽しそうに演じており、気持ちよく笑える。ホームズとワトソンの息もぴったりあっているし、マイクロフトの変な人ぶりも面白い。

 

 ただ、いくつかちょっと疑問点があった。ワトソンがメアリ・モースタンと結婚する前に結婚していたのではないかというのはたまに言われる話らしいのだが、離婚(一応19世紀の後半のイングランドでは離婚はできたのだが、珍しかった)も死別もしていないワトソンがホームズと一緒に住んでいるという設定はやや強引な気がした。一応世間体を気にしているらしいのにもかかわらず、ワトソンが堂々と妻と別居しているのはちょっと変だ(別居したら近所の人の噂の種になってしまうだろう)。さらに不思議なのはハドソン夫人とスコーンのくだりだ。ハドソン夫人はスコットランドに住んでいたことがあるという説が有力なんじゃなかったかと思うのだが、それなのになんでスコーンを見たことも無いんだろう。何か私にはわからない小ネタが入っているのだろうか…