年齢不詳のジョン・チョー~『コロンバス』

 『コロンバス』を見てきた。

www.youtube.com

 コロンバスで高校を卒業後、図書館で働いているケイシー(ヘイリー・ルー・リチャードソン)は建築が大好きで地元のモダニズム建築に詳しいのだが、一方で薬物依存症だった母親をひとりで置いていけないので街を出ることをためらっている。韓国で働いていたジン(ジョン・チョー)は著名な建築研究者である父が急にコロンバスで倒れたという知らせを受けてアメリカに飛んでくる。2人はひょんなことから出会い、建築の話をしながら親しくなっていくが…

 

 建築オタクのケイシーと、親が建築学者で自然と建築に詳しくなってしまったジンがひたすらコロンバスのモダニズム建築の話をする中で2人の抱えている問題が明らかになっていき、人生が変わっていく、というような話である。建築が持っている癒やしの効果みたいなものと話の内容がけっこうしっかりリンクしている作品だ。主演の2人はもちろん、パーカー・ポージーとかロリー・カルキンみたいな脇を固める役者陣も達者で、コロンバスのモダニズム建築を中心に据えた画面はとにかく綺麗だし、知的でよくできた映画である。ジョン・チョーがめちゃくちゃ年齢不詳なのが効いている…というか、チョーが撮影当時45歳くらい、リチャードソンは22歳くらいで年齢差が20歳以上あるので、普通に撮っているとなんかオッサンが若い娘に…みたいなイヤな映画になりそうなのだが、チョーがあまりにも年齢不詳なのでそういう感じがなくなっているところがいい。とくに面白いのは、韓国系のジンが親と距離を置きたがっているのに対して、アメリカの白人女性であるケイシーが母親の面倒をみることにこだわっているということだ。これは民族的ステレオタイプをひっくり返したような展開だと思う。

 ただ、本当に建築オタクが話しているだけみたいな映画なので、かなり人を選ぶ。いい映画ではあるのだが、他人にすすめにくい作品だ。