50年代風の衣装が効果的~ストリーミングミュージカルズ『エマ』(配信)

 ストリーミングミュージカルズの配信でミュージカル『エマ』を見た。前回ストリーンミングで配信された『高慢と偏見』同様ポール・ゴードンによる翻案である。2018年に収録されたもので、舞台をそのまま撮ったものではなく、けっこう編集してある。

www.emmamusicalpremiere.com

 話はだいたい原作準拠なのだが、衣装やセットが完全に50年代風なのに最初はちょっとビックリした。序盤は展開がほぼそのままで衣類が50年代のアメリカ風というのは効果的なのか?と多少疑問に思ったのだが、途中でナイトリー(ティモシー・ガラン)がエマ(ケリ・バレット)に対してハリエット(ダニ・マーカス)が非嫡出子だという話を持ち出すところで納得した。50年代のアメリカは比較的性道徳が保守的な時代だったので、ふだんは親しくお付き会いしているような仲でも結婚となると親の身元とかが問題視されるようなイヤな習慣が顔を出すというのもあり得ることだ。この点、ファッションやセットのチョイスはよく考えられている。

 また、原作との違いとして、小説にはハリエットとの身分差を認識したエマがちょっとハリエット夫妻と階級的な距離を置くようになるみたいなニュアンスのところがあるのだが、それがカットされている。これは19世紀初頭としては礼儀にかなったことだったのだが、今やるとエマがかなり鼻持ちならない人に見えるからだいたい最近の翻案ではカットされる。このプロダクションでは、エマとハリエットは双方結婚して立場が違うようになっても親しい女友達で、家族ぐるみでお付き合いするのだという雰囲気になって終わっている。

 一曲一曲がけっこう短く、ハリエットがマーティンを褒めるところや、エマが自分が本当にやりたかった縁結びは自分のものだと気付くところなど以外は、会話の一部が音楽になるような感じで流れており、わりとあっさりしたミュージカルである。さらにこれは撮影後の編集の問題かもしれないのだが、一節が終わるために「第〇章」という英語のタイトルがデカデカと出るのはちょっとくどい…というか、たぶんこれは舞台で上演していた時はそんなに気にならなかったのではという気がするのだが、放映で見るとぶつ切り感が出てしまうところがある。

 エマが自分の妄想とか思い込み、観客には読み取れるのだが本人はまだ気付いていない心情などを歌うところはとてもユーモアがあり、非常にわかりやすい。小説で読んでいるとエマはかなり困った人に見えることがあるのだが、このミュージカルはエマのそういう困った人ぶりを舞台らしい方法で面白おかしく描いている。オシャレなファッションやユーモアの感覚などについては、おそらく全体的にちょっと『クルーレス』の影響があると思う。 

クルーレス (字幕版)

クルーレス (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video