つまらなくはないが、そんなに好みではないかも~メトロポリタンオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』(配信)

 メトロポリタンオペラの配信で『コジ・ファン・トゥッテ』を見た。1996年から上演されている演出を2014年に再演した舞台で、以前映画館で上映されていた2018年の新演出とは全く違うものである。指揮はジェイムズ・レヴァイン、演出はレスリー・ケーニッヒである。

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 海辺の船の帆とかを強調したセットはなかなか魅力的なのだが、全体的にちょっとオーソドックスで軽い笑い話になりすぎている気がした。もうちょっと皮肉な笑いとか深刻さとかがあってもいい気がする。さらに、デスピーナをスリランカ系オーストラリア人であるダニエル・ドゥ・ニースが歌っていて、このキャスティングはどうかなーと思った。ダニエル・ドゥ・ニースの歌や雰囲気じたいは大変良かったのだが、他のキャストがほとんど白人なのにメイドだけ非白人というのは今見るとちょっとステレオタイプなキャスティングだという印象を受ける。かなり好みの問題だと思うが、2018年版のほうがずっと私は面白いと思う。

 フィオルディリージ(スザンナ・フィリップス)とドラベッラ(イザベル・レナード)の姉妹は大変良かった。最後のインタビューでも説明されていたが、ドラベッラは18世紀の元気な女性で、ひとりになるのが心細いという気持ちがあるせいで新しい求愛者になびいてしまうようだ。先日の『ラ・ボエーム』でもなかなか個性的なムゼッタだったフィリップスがフィオルディリージをとても可愛らしく歌っており、チャーミングだ。