役者陣が大変良かった~東京芸術劇場『真夏の夜の夢』

 東京芸術劇場野田秀樹脚色、シルヴィウ・プルカレーテ演出の『真夏の夜の夢』を見てきた。新型コロナウイルスのせいでプルカレーテがなかなか来日できずに大変だったらしいのだが、どうにか間に合うように来日して作れたらしい。

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 野田版夏夢はかなりシェイクスピアの原作と違っていて、アリスやらメフィストやら別の古典の登場人物が出てくるし、舞台は日本の料亭である。ヴィジュアルはプルカレーテらしい凝ったもので、わりと整理されたキッチンからちょっとゴミっぽい感じで袋などが散らばった森に舞台が変わり、映像もたくさん使用されている。ただ、さすがに感染症で芝居の上演も危ぶまれるような暗い時代だからなのか、前にプルカレーテが日本で作った『リチャード三世』などに比べるとだいぶ明るく楽しい雰囲気で、物語の力というものを前面に押し出したストレートな演出になっている。

 そういう正攻法な演出で際立っているのが役者陣の力で、キャスティングはぴったりだし、それぞれの演技の息も非常によくあっていると思った。『リチャード三世』の時はちょっと女性の役が小さくなっている印象があったのだが、これはそぼろ(鈴木杏、ヘレナに該当)、ときたまご(北乃きい、ハーミアに相当)、タイテーニア(これは加藤諒による女役)など女性の役柄が大変しっかりしており、それぞれキャラが立っている。一番良かったのはメフィスト今井朋彦、『リチャード三世』にも出演)で、スムーズでカリスマ的で実に上手だった。