楽しい作品だが…『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』(ネタバレあり)

 『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』を見てきた。

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 水泳選手のマティアス(ニコラ・ゴブ)は同性愛差別発言のために処分を受けることになり、クロアチアで開催されるゲイ・ゲームズ出場を目指すゲイの水球チームであるシャイニー・シュリンプスのコーチをつとめることとなった。シャイニー・シュリンプスはお祭り好きの集まりであまり強くなく、マティアスはあまりやる気が出ない。しかしながら人間味のあるチームメイトたちや娘のヴィクトワール(マイア・ケスマン)の影響で、それまで責任から逃れようとする傾向があったマティアスも本気で指導に取り組むようになる。

 チームメンバーのキャラクターが生き生きとしており、それぞれの人生模様もきちんと描かれていて、楽しい作品である。監督・脚本のセドリック・ル・ギャロはオープンリーゲイで本人も水球選手だそうで、内容はかなり実体験に基づいているらしい。けっこうリアルなのかもしれないと思うのは、LGBTスポーツの世界におけるゲイ男性チームの中でのトランス差別を描いているところだ。古株であるジョエル(ロラン・メヌー)がトランス女性であるフレッド(ロマン・ブラウ)のチーム再加入について、トランス女性は仲間じゃないからみたいなことをほのめかして難色を示すのだが、他の若いメンバーはジョエルが何を問題にしたがっているのかすらあんまりわからない(水着や保険を気にしているのかと思っている)、ということが描かれている。ジョエルはその後ちゃんと心を入れ替えてフレッドと仲良くなる。

 ただ、全体的には面白いとは言っても、けっこうステレオタイプだと思われるところはたくさんある。まず、フレッドはすごく良いキャラクターになりそうなのにあまり掘り下げられていない。また、ジャン(アルバン・ルノワール)が死んでしまうというのはちょっとお涙ちょうだいにまとめすぎな気もする。一番私が要らないのでは…と思ったのはマティアスのキャラクターで、ゲイのチームを描くならストレートのコーチを主人公にしてその改心を描く、みたいなのはそもそも要らないのではという気がした。どの程度事実に基づいているのかはわからないのだが、部分的にいろいろ体験をもとにしているにしても、もうちょっとそのへんをきちんと詰めた脚本にしたほうがもっと面白い映画になっただろうにと思う。