『クレーヴの奥方』のような…スタジオライフ『トーマの心臓』

 スタジオライフ『トーマの心臓』を見てきた。萩尾望都作品(未読)を倉田淳脚本・演出で舞台化したものである。スタジオライフの定番演目だが、今回初めて見た。キャストはレジェンドチームとクールチームがあるが、私が見たのはクールチームのほうだった。

 ドイツのギムナジウム(時代設定があまりはっきりわからず、たぶん20世紀前半くらいだと思うのだがそれ以上は判定できなかった)が舞台で、人気のあった生徒トーマが自殺した後の学校生活を描くものである。トーマが恋をしていたらしいユーリ(青木隆敏)は塞ぎ込み気味だったのだが、転校生でトーマにそっくり(どうも親戚らしい)のエーリク(関戸博一)が転校してきて、ユーリの心境にもいろいろ変化があらわれる。他にもいろいろな生徒が登場し、人間関係のもつれが描かれる。

 右手に階段のある二階層のセットで、ほとんどは学校の中で展開するが、学外の場面もある。よくまとまった学校BLという印象なのだが、だんだん宗教的になっていく…というか、最後はユーリが神学校に行くことを決めるという展開になっている。恋のトラブルに見舞われた十代の純真な若者が信仰に慰めを見出して俗世を捨てるという展開はラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を思い出した(クレーヴの奥方は16歳である)。おそらくけっこう丁寧に描きこまれた漫画が原作だと思われるのだが、そこまでダイジェストっぽくなく、まったく話を知らない人にもわかりやすい作品だった。