雑然としたセットからジャージー・ボーイズのルーツが感じられる~『ジャージー・ボーイズ』

 日生劇場で藤田俊太郎演出『ジャージー・ボーイズ』を見てきた。この作品を生の舞台で見るのは初めてである(映画版は見たことある)。キャストはブラックチームだった。

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 映画を撮影しているという設定のセットで、後ろに着替えがかかってるラックがあったり、両脇にモニタがあったり(両脇のモニタは場面によって出たり引っ込んだりする)、わりと雑然とした美術である。後ろにはグループ名の発想のもとになる、フォー・シーズンズというボーリング場の電飾の看板が後ろにずっとかかったままで、しかもこの看板は最初は電気が切れかけていてFour SeasonsじゃなくOur Sons「我らの息子」に見える。このへんからもわかるように、ジャージーのにいちゃんたちであるフォー・シーズンズのルーツが視覚的にも表現されたセットである。

 美声のフランキー(中川晃教)、作曲者のボブ(東啓介)、最初にバンドを作った不良青年のトミー(藤岡正明)、目立たないがいろいろ考えてはいるニック(大山真志)、それぞれ性格の違う4人が繰り広げる、あまり美化されていないフォー・シーズンズの伝記である。フランキーとボブの互いの才能を認め合う冷静な協力関係と、フランキーを育てたのは自分だという自負のあるトミーのフランキーに対する兄貴面…というかかなり暑苦しい感情が対比されている。第四の壁を越えて登場人物が観客に話すところが多く、それぞれが何を考えているか、そしてその考えがどうすれ違ってそこからグループが壊れていくのかがわかりやすく表現されている。

 演技や演出については文句なく面白かったのだが、世間では絶賛の中川フランキーがどうも私は全く個人的な理由であまり好きになれなかった…というか、中川フランキーはフランキー・ヴァリのあの独特のファルセットの完コピを目指しているようで、そこにちょっと人工的な物真似っぽさを感じてしまった。こういう作品ではそこまで物真似をしないで役者が自分の味を出したほうがいいと思うのだが、ヴォーカルの技巧をきちんとコピーすることに注力しすぎているような気がして、むしろもっと自由にやってほしいと思った。途中の「君の瞳に恋してる」はあまりファルセット技巧に走らずリラックスして自由に歌っているように思えたので、こういう歌をもっと聴きたいなーと思ってしまった。

 

ジャージー・ボーイズ(字幕版)

ジャージー・ボーイズ(字幕版)

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