かなり「愛」が中心のプロダクション~『ジェーン・エア』(配信)

 『ジェーン・エア』を配信で見た。ブロンテの原作をジョン・ケアードとポール・ゴードンが翻案したものである。2000年初演のものの日本語版である。

 セットなどはわりとオーソドックスな歴史物風である。ナショナル・シアターブラックアイド・シアターでも別バージョンの『ジェーン・エア』を舞台でやって配信したのだが、その木枠みたいなセットに比べるとだいぶ美術が伝統的だ。ロチェスター邸にやってくる貴婦人方のドレスがけっこう趣味が悪くて性格を表している一方、ジェーンやロチェスターは色味はあんまりないがすっきりした服を着ている。

 基本的なキャストやスタッフが以前に見た『ダディ・ロング・レッグズ』と同じということもあり、『ダディ・ロング・レッグズ』よりはちょっとダークだが、わりと似た印象を受けた。ロチェスター井上芳雄)はそこまで荒っぽくて粗野な感じではなく、苦労したせいで人生の喜びを失い、鬱々として心が安まらずにエキセントリックな行動をする人という感じであり、また原作よりもだいぶ伊達男風だ。ジェーン(上白石萌音)は愛情深くて優しい女性である。全体的に、歌詞の点でもロチェスターとジェーンの心の触れあいの表現の点でも、非常に「愛」の力を称える内容である。ロチェスターとジェーンの間にはいろいろ問題はあってもなんだかんだで強く惹かれ合う気持ちが存在する。一方でシンジュン(中井智彦)は全くの打算…というかジェーンを労働力として使いたい気持ちで求婚してくるのが見え見えであり、そこでジェーンがシンジュンはやばすぎだと思ってロチェスターを思い出すという、まあ身も蓋もないところもあるが説得力はある展開になっている。そのぶんジェーンの自由を求める戦いの側面は弱まっている気はするのだが、全体的に統一感があり、温かみもある作品ではある。