しっかりした恋愛劇~『エンジェルス・イン・アメリカ:第二部「ペレストロイカ」』

 『エンジェルス・イン・アメリカ:第二部「ペレストロイカ」』を新国立劇場で見てきた。第一部に続き、4時間ある。

 この芝居を見るのは3回目なのだが、3回目でやっとなんとなく細かいところも見えてきたような気がした。とくにこのプロダクションの第二部はジョー(坂本慶介)、ルイス(長村航希)、プライアー(岩永達也)の三角関係的な恋愛感情のもつれがはっきりしていて、ジョーとルイスが一緒に過ごすところなどもロマンティックな感じだ。この作品はけっこうちゃんとしたロマンスものなんだな…という気がした。

 プライアーが見るヴィジョンは壮大で宗教的である一方、プライアーの生活に根ざしたところもたくさんある。天使(水夏希)がわりとくだけた態度で歩き回ってプライアーのベッドで水を飲むなど、日常的な行動をとっており、預言者がみるヴィジョンとしては身近な要素がある。このヴィジョンはプライアーが暮らしの中でルイスに対する恋愛感情を整理し、自らの病気とも向き合ってサバイバルするための心理的なステップでもあるということがよくわかる描き方になっている。

 あと、ハンナが天使との性的遭遇の後にかなり機嫌が良さそうになるところも面白いと思った。第一部のハンナはすごくピリピリしていて不機嫌そうであり、人生に不満がありそうな感じだったのだが、この天使との性的遭遇の場面を見て、実はハンナはもともとあんまり男性が好きじゃなくて、女性のほうが好きだったのでは…という気がした。ハンナがずっとピリピリしていて息子のカミングアウトにもうまく対応できなかったのは、ハンナ自身の中にも同性愛的な感情があって、それにうまく対処できずにこれまでモルモン教の教えに従って生きてきたからなのではないかという気がする。