ドリームバレエのあるホラー~『Pearl パール』(試写、ネタバレ注意)

 『Pearl パール』を試写で見た。『X エックス』のプリークェルである。

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 舞台はスペインかぜが大流行中の1918年、テキサスの田舎の農場に住むパール(ミア・ゴス)は、第一次世界大戦で出征した夫ハワードを待ちながら、ドイツ系移民の両親と暮らしていた。母ルース(タンディ・ライト)は厳格で、父(マシュー・サンダーランド)は病気で介護が必要な状態である。孤独な生活の中、パールは映画に憧れてショーガールになって家を出ることを夢見るが…

 前作『X エックス』はいわゆるハグスプロイテーション映画(ばあちゃん大暴走ホラーみたいなやつ)で、高齢女性をすごくネガティヴに表現していてあんまり感心しなかったのだが、この映画ではパールがこうなったのには背景が…ということが描かれており、別にパールは年をとっているから変になったのではなく、若い時からいろいろあってこうなった…という話になっている。『X エックス』と『Pearl パール』両方でポルノ映画の歴史みたいなものに継続性を持たせているところも含めて(途中で上映される『フリー・ライド』は実在する映画である)、映画史と映画の中にあるネガティヴな側面を描こうとしているところは良いと思う。ただ、ちょっとどうかなーと思うのはこの映画の舞台が1918年なのに、全体的に映画の見た目はどっちかというと『オズの魔法使い』とか『キャット・ピープル 』など30-40年代くらいの映画に雰囲気が似ていて、時代の点で多少齟齬があることだ(途中でドリームバレエみたいな場面があって、ドリームバレエがあるホラーというのは珍しい気がするのだが、これも40年代に始まったテクニックではないかと思う)。また、介護をしながら映画に憧れている主人公がだんだん異常な行動を…という点では『フェイド TO ブラック』の女性版と言えるかもしれない。