全然ロマンティックな話ではないような気がしてきた~ミュージカル『プリティ・ウーマン』

 『プリティ・ウーマン』を見てきた。言わずと知れた1990年の有名ロマコメ映画の舞台ミュージカル版である。

 お話はほぼ映画と同じで、セリフもけっこう映画からとってきている。というわけで映画に対するノスタルジアをかきたてるような内容にはなっている…のだが、その分現代的なアップデートがなく、かなり古い話に感じられる。事前に批評でけちょんけちょんにけなされていたのでどんだけひどいかと思って見に行ったところ、まあ気楽に見られる楽しいミュージカルというラインはクリアしていたので思ったほどひどくはなかった。とくにホテルで働いている人たちのやりとりとかはけっこう面白く、ホテルの支配人トンプソン(オレ・オダバ)は映画でも大変よい役だったが舞台でも良かったし、ボーイさんのジュリオ(ノア・ハリスン)も笑わせてくれる(お客に振り回されすぎてちょっと気の毒なとこもあったが)。それでも貧しいセックスワーカーがとんでもない金持ちに拾われて最後は王子様に救出され…みたいなのは今見ると相当に昔風である。ヴィヴィアン(ヴィヴィアン・デイヴィス)には結婚以外のキャリアが開かれていないみたいに見え、いちおう元同僚が警官になるという話が強調されているところはフォローなのだと思うのだが、それでも「いやー30年以上前の話だな…」という感じである。

 とくに気になったのは、実はこれは全然ロマンティックな話ではないのでは…ということだ。エドワード(オリヴァー・サヴィル)はこの話において、より有能な実業家に成長しただけであって、よりよい人間になったわけではない気がする。エドワードはヴィヴィアンという一見したところ貧乏くさくて時代遅れで将来性がなさそうな案件に気まぐれでごく少額の投資をしたところ、実はヴィヴィアンには素晴らしいポテンシャルがあることがわかり、そこからものすごいリターンがあった。それを経験したエドワードは、将来性がなさそうな案件でもニッチなところに注目して育てれば立派なリターンがあるということに気付いて船の会社を助けることにした…という流れのお話である気がするので、エドワードが何かお金以外の価値を認識して人間的に変わった、という話ではない気がする。そういう点ではこのお話は徹頭徹尾ビジネスとお金の話であって、あんまり恋愛や人間関係の話ではない気がする。