ロマンティックコメディ版『スクリーム』~『ロマンティックじゃない?』(ネタバレあり)

 行きの飛行機で『ロマンティックじゃない?』を見た。日本ではネットフリックスで配信されているらしい。

 ヒロインのナタリー(レベル・ウィルソン)は母親から、ロマンティックコメディ映画は恋愛を理想化するもので、ナタリーのようなたいして魅力的なわけではない女の子には起こらないものだ、と言われて育った。長じてロマンティックコメディ嫌いになったナタリーだったが、ある日事故に遭い、その日から彼女の人生は突然、ロマンティックコメディそっくりになってしまう。自分のことなんか名前すら覚えていなかったはずのハンサムなブレイク(リアム・ヘムズワース)が急に言い寄ってくるようになり、ワードローブが突然オシャレになって…

 ぽっちゃりめで自信のないヒロインがある日突然、事故に逢って…という立ち上がりなちょっと『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング 』に似ているのだが、あれよりもずっとロマンティックコメディというジャンルの型をふまえて、それに対する諷刺と部分的な肯定を仕込んでいるぶん、よくできている。ナタリーが序盤のほうで、ロマンティックコメディのクリシェとして、自分のストーリーラインを持たないゲイの親友が出てくるとか、意味無く女同士がいがみあっているとか、あるあるネタをえんえんと話す場面があるのだが、その後それが全部ナタリーの身に起こるようになるのである(これはまあ、最後にどうしてそうなるのかオチがつくのだが)。これはけっこう面白いというか、『スクリーム』がホラー映画についてやったことをきちんとロマンティックコメディについてやってる、ポストモダン的なジャンル映画だと思う。『プリティ・ウーマン』や『ベスト・フレンズ・ウェディング』みたいなジュリア・ロバーツ主演のコメディを中心に、オードリー・ヘプバーンの映画とか、さまざまな映画への言及を折り込んでいる。最後にかなりロマンティックコメディらしいオチがつくのはちょっと定形すぎるが、そうは言ってもけっこう楽しめる作品ではあると思う。

 なお、アシスタントのホイットニーとナタリーが話す場面でベクデル・テストはパスする。