スタントと映画の歴史に敬意を表したロマコメ~『フォールガイ』

 『フォールガイ』を見てきた。

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 主人公はアクション映画でスタントをつとめているコルト(ライアン・ゴズリング)である。コルトは撮影担当のジョディ(エミリー・ブラント)と相思相愛だった。ところがハリウッドスターであるトム(アーロン・テイラー=ジョンソン)のスタントをつとめている時に事故で大ケガをしてしまう。落ち込んだコルトは18ヶ月間、スタントの仕事もせず、ジョディにも連絡をとらずに引っ込んで暮らしていた。ところがプロデューサーのゲイル(ハンナ・ワディントン)から、ジョディの初監督作でスタントの助けが必要だという連絡が入る。コルトは撮影のためにシドニーに飛ぶが…

 非常に私好みの作品である。よく考えるとけっこう話が緩いところとかもあるのだが、そんなことを全部吹っ飛ばして楽しめるくらい、ゴズリングとブラントの息の合った掛け合いが魅力的で、大人の男女の当意即妙なやりとりを含んだ大変ちゃんとしたロマコメになっている。ゴズリングは『バービー』、ブラントは『ジャングル・クルーズ』でロマコメの才能を見せてはいたのだが、この作品ではふたりのロマコメ力が炸裂している。スプリットスクリーンで2人が撮影の話をしながら実はロマンスの再燃も同時にすすんで…というあたりは大変楽しい。

 アクションのスタントに敬意を払っているのもいい。アカデミー賞などにスタント部門がないことは常々批判されており、私も作るべきだと思っているのだが、スタントは危険なのにあまり日の当たらない仕事である。監督のデイヴィッド・リーチがもともとスタントコーディネーターだったということもあり、この映画ではスタントの仕事が大変きちんと描かれている上、コルトがやるスタントやアクションが本人の心境やプロットの進展とちゃんとリンクしている。コルトがジョディに再会した後、何度も火だるまになるスタントをやるところなどはヒドいが笑えてしまうし、コルトが「昔こういうスタントをしたんだよ」みたいなことを言うと必ずそれが後で回収される細かいネタ拾いも面白い。

 ロマコメやアクションものを中心に過去のいろいろな映画やドラマに対する言及があり、全体的に映画愛にあふれている。脇役陣もけっこう良く、ステファニー・スーやウィンストン・デュークはちょっとしか出てこないのにわりと印象に残るし、犬もかわいい。アーロン・テイラー=ジョンソンが少しだけシェイクスピアネタをやってくれるのも個人的にはツボだった。最後は豪華なカメオがある。