人数が少なくなっているところは気になるが…『オリエント急行殺人事件』(ネタばれあり)

 『オリエント急行殺人事件』舞台版をマンチェスターのローリーで見てきた。アガサ・クリスティの小説をケン・ラドウィックが舞台化したもので、演出はルーシー・ベイリーとマイク・ブリットンである。この日はブリテン諸島ツアー初日ということで、最初にラドウィックが出てきてごくごく短いご挨拶をしていた。一度日本語版を見たことがあるのだが、だいぶ美術や演出などが違っていて全然違う芝居みたいに感じた。

 舞台上に回転・解体できる客車を設置し、これをいろいろ動かして場面展開を行っている。とくに序盤は狭い列車内で人々が押し合いへし合いする緊張感・閉塞感をうまく出している。これがスリリングさにつながっており、とくにラチェット(サイモン・コットン)がアンドレニ伯爵夫人(ミラ・カーター)にセクハラ行為をする場面などはけっこう狭くて逃げ場がなく、ラチェットが脅迫的でかなり怖かった。ポアロ(マイケル・マロニー)はけっこうデイヴィッド・スーシェを参考にしていると思った。

 全体的にキャストも良く、演出もしっかりしているし、楽しい芝居だった。ただ、やはり殺人犯の人数が12人(陪審員の数)から8人に減らされているのは、原作にある裁きという意味合いが薄くなるので物足りないところである。