『こいつで、今夜もイート・イット アル・ヤンコビック物語』を配信で見た。これは替え歌で有名なウィアード・アル・ヤンコビックの伝記映画…なのだが、内容はほぼウソで、ミュージシャンバイオピックジャンルをパロディ化した諷刺的な映画である。
ウィアード・アル・ヤンコビックの人生をダシにして『スパイナル・タップ』とか『ウォーク・ハード ロックへの階段』みたいなことをしようという試みである。アル(ダニエル・ラドクリフ)と理解のない家族の関係やマドンナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)とのロマンス、酒に溺れた暮らしからの脱出などを描いているのだが、「そんなんあるわけないでしょ!」みたいな展開がどんどんエスカレートしていくので、見ていて全く本当のことではないだろうということがわかる作りになっており(アルが誘拐されたマドンナを救出するためパブロ・エスコバルと戦うなんていう話まである!)、極めて面白おかしい。ミュージシャンバイオピックによくある展開を非常に大げさにデフォルメして出しており、この映画じたいがウィアード・アル・ヤンコビックがいつもやっているユーモアあふれる替え歌の一種…というか、ミュージシャンバイオピック映画の替え歌みたいに機能するようになるというなかなか気の利いたメタな映画である。ダニエル・ラドクリフの演技もいいし、豪華なカメオもたくさんあって楽しい映画だ。マドンナファンとしてはマドンナがとんでもない悪役なのが若干気になるのだが、これもまあ女性を悪者か救世主にしがちなミュージシャンバイオピックのパロディだというのはわかる。