マキシム・ラッパズ監督『山逢いのホテルで』を試写で見た。
舞台は1997年、スイスのアルプスにある小さい町である。ヒロインのクローディーヌ(ジャンヌ・バリバール)は仕立屋を営みつつ、障害のある息子バティスト(ピエール=アントワーヌ・デュベ)の面倒をみている。週に1日だけ、山逢いのホテルで男性客と行きずりのセックスをするのが息抜きだった。ところが後腐れ無い関係を楽しんでいたはずのクローディーヌはふとしたことから本気の恋に落ちてします。
しっとりめの大人のロマンス映画で、性描写もたくさんあるがこの種の映画としてはわりと上品に撮られているほうでそんなにしつこくはない。中年女性の性欲や人生の選択をちゃんと描いているあたりはいいと思う一方、同種のテーマを扱っていると思われる『ポルノグラフィックな関係』などに比べるとまあありがちなロマンス映画という感じだし、『ジャンヌ・ディールマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』から影響を受けて作られたらしいのだが、あんなに変な映画ではなく、そこまで新鮮味は無いかな…と思った。なお、顧客情報を漏らすホテルのカウンターはちょっとどうかと思った(まあ90年代だと今よりプライバシー保護の意識がゆるかったのかもしれないが)。バティストがダイアナ妃にすごく憧れていてダイアナの死亡事故が出てきたり、クローディーヌが登山鉄道みたいなやつに乗ってホテルに通っていたりするあたりのディテール描写はけっこう面白かった。