なぜこんなに穀物の話に…『REBEL MOON』二部作ディレクターズカット版(配信)

 『REBEL MOON』二部作をディレクターズカット版で見た。去年第一部をディレクターズカット版ではないバージョンで見たのだが、第二部はまだ見ていなかったのでまとめて見た。

 展開は相変わらずしっちゃかめっちゃかである。「その話は繰り返さなくてもいいのでは」と思うところがかなりある一方、「いきなりこんなところでそんな重要情報を!?」とか「それをそんなに安易に片付けていいの?」いうような展開もあり、脚本の進み方がだいぶゴタゴタしていてバランスが良くない。とくに途中でみんながトラウマを共有するみたいなくだりは、あまり観客が飽きないような形で登場人物のトラウマの深さを徐々に見せることができないので、突然みんなを集めてケアセッションをやりました…みたいに見える。また、穀物生産の話がえらく丁寧に描かれているバランスも非常に不思議…というか、ザック・スナイダーは本当は冒険アクションSFではなく、自給自足のリバタリアン的なコミュニティを描いた農業SFみたいなものを撮りたいのでは…と思ってしまった。そこが評価ポイントなのかどうかはよくわからないが、穀物生産はそれに携わるキャラクターの動きなども含めてけっこう気を遣って綺麗に撮られていると思う。

 ただ、少なくとも第一部は描写が増えて丁寧になった分、前のバージョンよりは面白くなっている気はする。性描写や恋愛描写がけっこうしつこくなっていると思うのだが、ザックが撮りたいのがリバタリアン農業SFみたいなものだとすると、性的モラルが自由で男女問わず合意に基づいた主体的な性交渉を楽しんでいる農業コミュニティが、抑圧的で収奪によって成り立っており、性暴力を支配の道具の一部みたいに組み込んでいるレルムと対比されているというのは大事なのかもしれないので、ラブシーンやセックスシーンは別に単なるサービスを越えて監督が重視しているものなのだろうとは思う。