ネッドの部屋はなんであんななのか?~『17 Again』

 Brillia HALLでミュージカル『17 Again』を見てきた。2009年のザック・エフロン主演映画の舞台化である。高校生の時にバスケットボールの奨学金をあきらめて妊娠したガールフレンドと結婚した主人公マイクが中年になり、離婚の危機にさしかかった時に突然17歳に戻ってしまう…という基本的なストーリーは映画と同じだが、細かいところがちょこちょこ変わっている。

horipro-stage.jp

 もともとのお話は気軽に見られるがけっこうよくまとまった高校コメディで、舞台版もその雰囲気をとどめた感じになっている。原作のなんかアンチセックス的なところは薄めてあるのが良かった。また、もとの映画では大人のマイクがマシュー・ペリー、17歳の高校生がザック・エフロンだったのだが、舞台版では竹内涼真が両方とも演じている。この演じ分けが舞台初主演にしてはなかなかちゃんとしており、中年の危機にさしかかったもっさりした男と若い高校生をはっきり違う雰囲気で演じている。妻のスカーレット役のソニンも良かったし、またマイクが娘のマギーを説得するところで、舞台右側にマギーが生まれた時の回想場面が出てくるというような細かい演出も面白い。ただ、主演陣以外の歌はちょっと安定感がなくてイマイチという気もした。

 しかしながら私が一番気になったのは、マイクの親友であるネッド(エハラマサヒロ)のオタク部屋である。ネッドは高校生の時はいじめられっ子のSFオタク、今はIT関係のセキュリティの専門家で大金持ちという設定である。しかしながらこのネッド、舞台版の部屋のデザインからして、たぶんオタクコミュニティにもあんまり友達がいない、極めてとっちらかったタイプのオタクである。何しろキャプテン・アメリカの盾とバットマンのグッズと『スター・ウォーズ』のヨーダが同じ場所に飾ってあり、その時々でハマったものを行き当たりばったりに買って整理しないで飾っている感がすごい。ネッドはリッチなので広い家に住んでいるらしいのだが、そういう住環境で秩序立ったオタクや一作ごとに深掘りするオタクであれば、グッズや資料はDCとマーベルとSWで棚を分けるんじゃないかと思う。途中でネッドはマスターソン校長を口説くときに自分はオタクとしても中途半端なんだと言っていたが、まさにそういう感じの部屋である。ははあ、だからオタク友がいなくて、マイクみたいな非オタクの親友がいるんだ…と妙に納得してしまった。