キラン・キオ監督『花嫁はどこへ?』を配信で見た。
舞台は2001年のインドの田舎の村である。結婚したばかりの花嫁プール(ニターンシー・ゴーエル)は花婿ディーパク(スパルシュ・シュリーワースタウ)とともに夫の故郷の村に向かうべく、新婚のカップルで混雑した列車に乗る。居眠りしていたため降りる際に慌てたディーパクは、とっさにプールだと思って赤い花嫁のサリーにヴェール姿の女性を連れて慌てて列車を降りるが、家に帰ってヴェールを上げた時に現れたのは全く違う別の女性(プラティバー・ランター)だった。この女性はどうも訳ありらしく、あまり自分の情報を明かさない。一方、全く違う駅で目覚めたプールは慌てて降りるが、お嬢様育ちのプールは自分の性格な住所や夫の村すらちゃんと覚えていなかったため、なかなか家に帰れない。
インドの伝統的な結婚を題材にしたもので、新妻は人前で夫の名前も口にできないとか、移動中にヴェールをかぶるとか、保守的で女性を抑圧するような習慣が批判的に描かれている。一方で登場人物のキャラクターの個性が違いがうまく描かれており、単純化はまったくされていない。ディーパクとプールはそれぞれ愛し合っているのだが世間知らずなカップルでそれぞれこのトラブルを通して成長しており、とくにプールはたどり着いた先でこれまで会ったことがなかったような人々に出会い、夫なしで屋台を持って自立しているマンジュ(チャヤ・カダム)にいろいろなことを教わり、料理の腕を生かして初めてお金を稼ぐなど、結婚前に得がたい経験をする。一方で謎の女性だったジャヤははるかに世間慣れしたはっきりした性格の女性で、どうも前の妻を殺した疑いがある虐待的な男性との強制結婚から逃げたいと思っていたことがわかる。
脇のキャラクターも面白く、豪快だがやさしいマンジュは大変いいキャラである。いい加減な政治家とかあやしい警官(ラヴィ・キシャン)とか、いかにもインドの田舎のダメな人という感じの人物も出てきて諷刺されているのだが、警官であるマノハルは途中まではひどい態度だったのに、最後にさすがにまずいと思って人情を見せる。このあたりの機微の描き方も良かった。とても後味の良い心温まる終わり方で、楽しく見られる映画である。