ダブリンの郊外にある去年の末にできたばかりのコンサートホールであるラークでクリスマスパント『シンデレラ』を見てきた。舞台の上にCMを流す小さいスクリーンがあるという変わった構造の劇場だった。
なかなかひねった『シンデレラ』で、悪役が王子のおつきであるダンディーニである(名前はロッシーニのオペラ準拠だが、キャラは全くの別物)。シンデレラと王子は以前に会って互いに惹かれていたが、王子が多忙でシンデレラにちゃんと連絡しなかったせいで仲が自然消滅してしまっており、王子はあらためてシンデレラにちゃんと求愛したいと思っている…のだが、フラれたシンデレラは王子に対してあまり良い印象を抱いていない。ダンディーニは世間知らずな王子を騙して王国の財産や権力を我が物にしようとしており、王子が立派な結婚をするとこの目論みの邪魔になるので、お金に困っているシンデレラの継母を脅迫してシンデレラを舞踏会から遠ざけようとする。継母と義理の姉たちは別にシンデレラを虐待していない…というか、母親は実の娘たちを若干贔屓にしているが別にシンデレラを積極的にはいじめていないし、義理の姉たちも怠け者でみんなに対して無作法なだけで、とくに妹をターゲットに悪さをしているわけでもない。ダンディーニに脅迫されると継母はシンデレラも舞踏会に行く権利があると言って一応抵抗するし、義理の姉たちも妹が舞踏会に行けなくなったと聞いて驚いており、シンデレラの実家の人たちは軽率だが別に悪人ではないということになっている。
このためけっこうハラハラする展開になっており、ダンディーニがしょっぱなからワル感全開で出てくるので、初登場時から子どもたちにブーを浴びせられていた。クリスマスパントは客いじりが多いし、お客も大半は子どもなのだが、ダンディーニが出てきて悪いことをたくらむたびに子どもたちが「うそつきー」とか「ブー」とか言う。こうやって子どもたちがウソや悪だくみは駄目ですよということを学ぶんだな…と思った。メチャクチャなパロディであるクリスマスパントだが、けっこう教育的でもある。なお、このパントでもドナルド・トランプがバカにされており、本当にアイルランドの子どもたちにトランプはウケが悪い。
大変楽しいパントだったのだが、途中で火災報知器が鳴って全員、外に避難ということになったのはビックリした。ステージにたくさん煙が出ていたので、どうもスモークマシンの不調かなんかだったらしい。10分ほどで全員中に戻れるようになったのでよかったが、海に近いところなのでとにかく避難中は風が強くて寒かった。