ショーン・バーン監督『デンジャラス・アニマルズ 絶望海域』を見た。
アメリカ人のサーファーであるゼファー(ハッシー・ハリソン)はオーストラリアを旅行中、地元のサーファーであるモーゼス(ジョシュ・ヒューストン)と仲良くなる。ゼファーはモーゼズを残して朝の波に乗りに行くが、そこでサメ体験船の船長であるタッカー(ジェイ・コートニー)に拉致されてしまう。船の底で目覚めたゼファーは、同じ部屋にやはり旅行者である女性ヘザー(エラ・ニュートン)が監禁されているのを発見する。一方、モーゼスは車を残して消えたゼファーを心配し、行き先を調べ始めるが…
サメ映画みたいなビジュアルなのだが、開始10分くらいで実は人怖ホラーであることがわかる。全体としてはけっこう正統派のスラッシャーホラーで、武器がガーデニングの道具ではなくサメであるというだけである。シリアルキラーであるタッカーが悪辣で怖すぎるせいでむしろサメがまともに見える…というか、サメは肉食動物として海にいる生物を食っているだけで別に自然にもとる行動をとっているわけではないし、ヒロインのゼファーもタッカーに対して、お前はサメみたいな強くて賢い動物じゃない…というようなことを言い放っており、この映画ではどう見てもサメよりも人間のほうが悪い。動物パニック映画としてはかなり捕食動物であるサメに対する敬意があるほうなのではないかと思う。
お金のかかっていない映画で、終盤は少々強引なところやしつこいところもなくはないと思うのだが、まあスラッシャーホラーなんでけれん味のあるヘンテコな展開は定番ではあるのでそんなに気にならない。タイトな脚本とショーン・バーンお得意のグロテスクなゴア描写が効いており、大変よくできたホラーである。ワイヤーつきのブラジャーとか、サーファー向けの波観察サイトとか、日常で使うものを取り入れた展開は見ていてほう…と思った。ショーン・バーンは第1作『ラブド・ワンズ』でも通常のホラーのジェンダー構成をひっくり返した展開をものすごいゴア描写で味付けするということをやっていたが、この作品も一夜の情事のおかげで命が助かるというセックスポジティブな展開とか、不屈の精神を持ったヒロインが出会ったばかりの優しいモーゼスを助けたりとか、わりとジェンダーやセクシュアリティについて定型をわざと外したこともやっていて工夫がある。とにかく残虐描写が凄いので人にはすすめにくいが、ホラーファンは見て損は無い作品だと思う。