新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

台湾で神様になってしまった日本の軍人をめぐるドキュメンタリー~『軍服を着た神様』(試写)

 『軍服を着た神様』を試写で見た。

www.youtube.com

 文化人類学者である藤野陽平と監督である遠藤協のチームが台湾で神様として祀られている日本の軍人たちについて取材する経緯を撮った作品である。台湾には民間信仰と結びついて日本の軍人が祀られているお堂がけっこうあるそうで、さらに日本に住んでいる軍人の一族も知らないうちに神様になっていたりするらしい。このふしぎな現象の経緯や理由を探るべく、お堂を管理している人たちに取材に行ったりするわけだが、そうした人たちに聞いてもいまいちなんでその軍人が祀られているのかよくわからなかったりする。お堂を管理している本人はなんとなく頭の中で理屈があるらしいのだが、聞いているほうは「なんでそれとそれが結びつくの?」とか「なんでそこでいきなりこの人が神様になるの?」みたいになって???が増える一方だ。まあ信仰とはそういうものだと言ってしまえばそうなのだが、とにかくふしぎである。

 日本の軍人が神様になっているというのは日本人としては全く想像もつかないことで、また台湾に対する植民地支配の歴史を思い起こさせるものでもあるので居心地が悪い話でもあるわけだが、とはいえ地元民は真面目に祀られた軍人を信仰しているのでそのあたりは尊重せざるを得ない。なんでも台湾の神様にはレベルアップみたいな概念があり、墜落死した飛虎将軍こと杉浦茂峰は地元の大物の神様である保生大帝のお引き立てを受けて神になった弟子筋の神格だそうだ。地元民の信仰を集めることにより、神様としての格が上がってお堂も大きくなったりするらしい。

 ちょっと大きい話になるが、全体としては日本人が忘れていたことを思い出させてくれるみたいな映画ではあったと思う。日本人は先祖の植民地支配が植民地にどういう影響を及ぼしたのかについて深く考えないで暮らしているが、こういう話を聞くとやはりそういうふうに忘れて何もなかったように暮らして行くのは良くないと思わされる。軍人が神様になっていたというのは別に地元民にものすごい悪影響を及ぼしていたというわけではないのだが、信仰の形を変化させたという影響はあるわけであって、ちょっと重く受け止めたほうがいいのかもしれないと思った。