モスクワシティバレエ『ロミオとジュリエット』〜マチネの前には歯を磨こう

 リッチモンド座でモスクワシティバレエの『ロミオとジュリエット』を見てきた。この間見たイングリッシュナショナルバレエに比べると全然パッとしなかった気がする。

 まずジュリエット役のダンサーの芝居がちょっと…初めのほうのジュリエットはやたら陽気で騒々しい感じだと思ったし(台詞がないのに騒々しいとはヘンな表現だが)、恋に落ちてからもちょっと芝居が大げさすぎていいと思えなかった。演出自体が全体的に大げさで、そのわりに細かいところが結構いいかげんで「なんでそうなるんだ?」という唐突な動きとかもわりとあったりしたので、ジュリエットの魅力のなさは演出のせいというもあるかも。ただ、ここ一ヶ月で三回バレエを見て、イギリスのバレエ団のほうがひょっとして「演技」に厳しいんじゃないかという疑いが…マシュー・ボーンにしてもこの間のイングリッシュナショナルバレエにしても、演出が結構ストレートプレイに近くてダンサーに芝居させるよね。

 あと、ダンスのことはよくわからないんだけど、この間のイングリッシュナショナルバレエに比べて若くて未熟なダンサーが多いような感じがした。大役の踊りのうまさはあまり判断できないが、バックで踊っている人たちはちょっと動きがあってなかったりするところがあったように思う。

 それからオケもちょっと…管楽器がたまに失敗してた。もっと練習しろ!

 とりあえずハコ自体はオーケストラピットと客席が近いこじんまりした劇場で結構私の好きな感じのとこだったのだが、このこじんまり具合があまり振り付けやセットとあってないのも問題。ジュリエットが舞台の端から端まで使って踊るところは後ろのダンサーとぶつかりそうになってた。

 マキューシオとか乳母が出てくる場面は笑えるところもたくさんあり、後半ちょっと調子が出てよくなってきた気がするが、全体としてはダメだった…と思うものの、まあいいかなと思ってしまうのはやっぱりプロコフィエフの音楽の力かも。プロコフィエフの音楽ってすごく「踊るための音楽」って感じがする。演出も演奏も下手でも、音楽を聴いて想像力で補えばまあなんとかなるのが『ロミオとジュリエット』のいいところかも。

 
 あと、これは舞台とは全然関係ないのだが、平日マチネってことで場内が老人ばっかりで、隣のおばあちゃんたちが激しくネギ(ニラ?)のにおいをさせていたのがちょっといやだった(しかも休憩時間にお酒を買ってきて最後までずーっと飲んでたので、隣に座っているうちは酒とニラの日々…)。マチネの前にスパイシーなランチを食べたら歯を磨くべきかも。