新国立劇場で『Shakespeare THE SONNETS』を見てきた。シェイクスピアのソネットを中心に『ロミオとジュリエット』とか『オセロー』とか、いろいろな作品を加味しながら作ったバレエ演目である。私が見た回のダンサーは渡邊峻郁と小野絢子だった。
全体的に詩人のいろいろな(ややとりとめもなく移り変わることもある)詩的想像と夢を表現しているような演目である。左側に机、奥にキャンドルのある鏡台が置かれたセットで、照明が大変凝っている。全体にわりと暗い舞台なのだが、場面ごとに照明が線になったり影になったりしてさまざまな表情や発想の区切りを表現しており、ダンスに非常によくあっている。もとのソネットよりも全体的にちょっとホラーっぽい演目で、第二場は黒の美しさに関するソネットから始まり、シェイクスピア劇の中でも『オセロー』とか『ヴェニスの商人』とか、なかなか禍々しい芝居のモチーフが現れてけっこう不穏な雰囲気になっている。最後の第三場は結婚と生殖をすすめるソネットから始まるのだが、子宝繁栄を願うソネット集の雰囲気からどんどん離れて、ドッペルゲンガーみたいな不気味な悪夢っぽいダンスに発展していく。