ドキュメンタリー映画『サンセット・ストリップ ロックンロールの生誕地』を見てきた。ハリウッドからビバリーヒルズにつながる目抜き通りであるサンセット・ストリップの文化史を、映画やテレビはもちろん音楽やコメディも含めたいろいろな流行を軸に探るものである。
けっこうすっきり流行の移り変わりをまとめていて、思ったより見応えがある。ホテルやナイトクラブなどの有名な店を中心に取材しているのだが、ハリウッドの映画スターやロックスターはもちろん、グルーピーとかクラブのオーナーとかいろいろな人にインタビューしており、音楽評論家のバーニー・ホスキンズや伝説のグルーピーであるパメラ・デ・バレス、バーレスクのスターであるディタ・フォン・ティースなど、通好みの面々も登場する。コートニー・ラヴとシェリー・カーリーが一緒に出てくるインタビューまである。ちなみに映画監督のケネス・アンガーが30年代の高級売春宿などの様子をやたら生き生きした調子で楽しそうに説明しているのだが、ケネス・アンガーはまだそんな年じゃないしだいたいたしかゲイだし、実際に行ったことがあるわけないのに見てきたような話しぶりで、まあ調べたんだろうがきっとほぼ嘘だろうと思ってなんかちょっと可笑しかった。
ジョニー・デップが持っていたクラブ、ヴァイパー・ルームについての説明がとくに面白かった。デップ本人がインタビューを受けて詳しく説明しているのだが、ジャズの時代の雰囲気が残ったくつろげるクラブを作りたかったそうで、当初はそういうコンセプトにあわせてまだバーレスクトループだったプッシーキャット・ドールズなんかに定期的に出演してもらっていたらしい。開店してけっこうすぐにリヴァー・フェニックスがこのクラブの前で亡くなってしまったのでしばらくクラブがとても暗い場所になってしまったが、ジョニー・キャッシュに出演してもらってやっと暗い雰囲気がなくなっていったそうだ。
オジー、シャロン、ケリーのオズボーン一族が全員取材を受けているのだが、なんか昔の記憶がちょっと曖昧でお爺オズボーンになっているオジーよりは口が悪いシャロンの取材のほうが面白かった。シャロンその他の音楽業界人やグルーピーの話によると、レッド・ツェッペリンはホテルの客としては最悪でとくにファンに対する態度がひどかったらしい。女性ファンの忍耐を試すみたいなことをしていて、(おそらくバンドもグルーピーも皆かなりラリった状態だったと思われるが)何日もホテルに手錠でグルーピーをつないでおくとかいうようなとんでもないことをしていたそうだ。グルーピーのドキュメンタリーだと、だいたいグルーピーだった人たちが「楽しかったし、何か無理強いされたりイヤなことをやらされることはそんなになかったし、めちゃくちゃやったけどいい思い出」みたいな話をしているが、シャロン・オズボーンみたいな人が心底ムカつくという顔でファン虐待の話をしているのを聞くと別の面が見えてきてまったく肝が冷えるし、ツェッペリンにいじめられたグルーピーが気の毒すぎる。死人が出なかったのが不思議なレベルである。