ツアーするビートルズ〜『エイト・デイズ・ア・ウィーク』

 ロン・ハワード監督『エイト・デイズ・ア・ウィーク』を見てきた。ビートルズのライヴを中心にしたドキュメンタリー映画である。

 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』以前のライヴバンドだったビートルズを中心に、バンドがどういうライヴを行い、なんでライヴをやめるようになったのかということを追った作品である。最後はルーフトップ・コンサートで終わるのだが、さらにその後にオマケとしてシェイ・スタジアムでのライヴのリマスター映像がついている。ロン・ハワードアメリカの監督であることもあり、どちらかというとビートルズアメリカにツアーに来てくれた!ということを喜ぶアメリカのファンの視点から描かれている。

 初期に小さいクラブで演奏していた時代のビートルズは若々しくてハッピーな感じだったのだが、だんだんスタジアムを回る苛酷なツアーのせいで疲労が蓄積し、クリエイティヴなことに力を注げなくなって不満を抱えていくまでがわかりやすく説明されている。とくにビートルズアメリカのシェイ・スタジアムでライヴをした際、史上初めて野球場でライヴをしたロックバンドになったらしいのだが、この時の音響が本当に酷かったらしい。野球の場内放送をするような設備しかなく、当然はじめての試みなので準備なんかできていない。お互いの演奏すら満足に聞こえていなかったそうで、とくに後ろのリンゴは前で演奏してるメンバーがケツ振ったり手を動かしたりしてる様子に合わせて叩いていたという実に悲惨な状況だったそうだ(演奏の映像でもリンゴが実にやりにくそうで、まったく気の毒すぎる)。こんな技術的問題だらけの状況ではライヴをやりたくなくなるのも当然だと思ってしまった。

 これ以外では、シガニー・ウィーヴァーやウーピー・ゴールドバーグみたいに子ども時代にビートルズに夢中になってライヴも実際に見たという人たちがインタビューを受けているのが良い。シガニーにウーピーとは、まったく最強のファンガールたちである。ウーピーはビートルスが白人のバンドなのに全く人種を気にせず好きになれたことが革命的だと思ったらしいのだが、他にもビートルズアメリカ南部で人種隔離を拒否したコンサートを行い、アフリカンのファンを喜ばせたことなどが大きくとりあげられている。