プロジェクションを多用した舞台~メトロポリタンオペラ『ルル』(配信)

 メトロポリタンオペラでの配信で『ルル』を見た。ウィリアム・ケントリッジ演出で、2015年に上演されたものである。

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  以前に配信で見たケントリッジの『魔笛』同様、とにかくプロジェクションを多用した美術がすごい。いろんな活字とかスローガン、ロールシャッハテストやらなんやらが背景にコラージュみたいに飛び交っており、舞台となっている時代の不安定さを印象づける美術だ。たぶんこれはヒロインであるルル(マルリス・ペーターゼン)が移り変わる時代や人々の心に翻弄される存在であることを示唆している。全体的にかなりルルが可哀想な女性に見えるというか、時代の犠牲者のように描かれていると思った。

 ただ、これは完全に好みの問題なのだが、私はどうもアルバン・ベルクの音楽がかなり苦手らしい。全体的に、とてもかっちりしているのに不穏な感じがして非常に疲れる。とくに、わざとものが割れるみたいな音色で挿入されるピアノの音がどうも居心地が悪い。正直、これならストレートプレイのほうが好きだなと思った。