百合の物語~三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020 真夏の死/班女』

  三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020 真夏の死/班女』を見た。先週に続く第2弾で、短編小説『真夏の死』と近代能楽集に入っている『班女』の上演である。

 正直なところ、小説を現代風にアレンジした『真夏の死』と、三島の戯曲をそのままやった『班女』はかなり台本じたいのクオリティに差があるように思ってしまった。加藤拓也作・演出の『真夏の死』は、悪くはないのだが、夫(平原テツ)が風俗店に行くくだりとか、一箇所だけ妙にコミカルでトーンが違っていてこんなに長くやる必要があるのかな…と思ったし、結末が小説と変わっているのだが、そこにたどり着くまでの展開がちょっと弱いというか、妻の不安定さがやたら強調されている気がした。一方で熊林弘高演出『班女』は、やっぱり不安定な女性が登場する話なのに台詞がどれも非常に強力で、オチの付け方も面白い。『班女』は百合の物語だと思うのだが、布が広がったり空間を狭めたりするちょっと抽象的なセットも良かったし、実子(麻実れい)と花子(橋本愛)が双方を補完しあうような存在になっていた。