シェイクスピアの女性キャラクターに台詞と歌で迫る~『シェイクスピア~哀しみの女たち~』

 髙岸未朝演出『シェイクスピア~哀しみの女たち~』を見てきた。シェイクスピア悲劇の女性キャラクターについて、モノローグとオペラのアリアを組み合わせて人物像を表現する企画である。演劇のモノローグは田野聖子、オペラのアリアは田村麻子が担当している。ピアノ伴奏(江澤隆行)はあるが、基本的には女性3人で作った感じの舞台である。

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 シェイクスピアの女性キャラクターに着目しようというのはトニ・モリスンの『デズデモーナ』ほかいろいろあるが、このプロダクションの特徴はモノローグとオペラの歌を組み合わせていることだ。モノローグは有名な台詞の他に芝居じたいの展開の説明も含まれており、モノローグがあってから歌があるという流れになっている。これ自体はなかなか面白い試みだと思うし、パフォーマーの2人も良かった。ただ、今回は悲劇がテーマで全部けっこう暗い場面であり(デズデモーナ、マクベス夫人、オフィーリア)、さらにマクベス夫人とオフィーリアは狂乱の場なので、少しメリハリに欠け、またこれはしょうがないことではあるのだが狂気を見世物にする場面が続くのはちょっと女性キャラクターに対する画一的な印象を与えてしまうような気がする。その点では最後にアンコールでジュリエットが出てくるのは良かった。あと、モノローグは日本語なのだがアリアは原語で、翻訳がないのはちょっとわかりづらいと思った。