話はともかく、照明などの演出が…TBS赤坂ACTシアター『NINE』

 TBS赤坂ACTシアターで『NINE』を見てきた。フェリーニの映画『8 1/2』のミュージカル化で、この舞台も映画化されたことがある。

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 60年代頃のイタリアを舞台に、仕事がスランプ状態に陥り、私生活も暗礁に乗り上げ気味の映画監督のグイド(城田優)の夢うつつを描いた物語である。すぐに撮影が始まるというのに全く脚本が書けておらず、プロデューサー(前田美波里)からは脅されている。プレイボーイ生活がたたって妻ルイザ(咲妃みゆ)と愛人のカルラ(土井ケイト)の板挟みだ。困ったグイドは、自分の私生活をネタにバロックオペラをくっつけたようなミュージカル映画を作ることにするが…

 

 話とか役者陣は悪くないし、グイドのぐちゃぐちゃでちょっと芝居がかった頭の中を象徴するような円形劇場っぽくもあり、映画の撮影現場っぽくもあるセットも良いのだが、私がとにかく気になったのは全体的な演出である。とりあえず照明がまぶしすぎるのが問題だ。舞台中央後方にかなり強力な光源があり、その前の舞台上方に映像と字幕が映るスクリーンが出てきて、たまにこのスクリーンを使った映画っぽい演出がある。このスクリーンを使った映画的な場面では、後ろの光源から光を出すことで昔の映写機っぽいチカチカした効果を出そうとしている。ところがこの光があまりにもまぶしくてそもそも映像や字幕などが見えない(この光がまぶしすぎる件については私だけじゃなく隣席の人たちも文句を言っていた)。だいたい、光を点滅させて映画っぽい効果を…というのもちょっと古い気がするし、この光源はそもそも全く要らないのではないかと思う。とくに第二部の最初のほうでは光がついたり消えたりしていたのだが、あれはミスなのか、それとも何かの演出効果を狙っているのか、よくわからないのだがとにかく見づらかった。

 あと、台詞が日本語とイタリア語、歌が日本語と英語という言語のチョイスもどうなのかと思った。城田優が英語で歌うとブロードウェイミュージカルっぽくて華やかだというのはわかるのだが、私はもともとこういう、とくにいろんな言語を話す人が出てくる設定ではないのに多言語を用いる舞台というのには批判的で、安易な国際化ごっこみたいだと思って警戒している。正直、全部日本語でやったほうがいいと思う。面白いところもたくさんあったので、このあたりはけっこう残念だ。