モデナ市立劇場によるパーセル『ダイドーとイニーアス』オンライン配信を見た。マリオ・ソラッツォ指揮、ステファノ・モンティ演出で、2020年11月8日に収録されたものである。
同じくらいの時期にボストン・カメラータがやったものは事前に外でロケした映像などを組み合わせてちょっと映画風にしていたのだが、こちらはオーソドックスに舞台を撮ったものである。無観客配信なのでおそらく客席をとっぱらってそこに古楽オーケストラを置いている。後ろには長方形を傾けた窓みたいな背景を設置し、その前でちょっとわざとらしさを加味した豪華な衣装を来た登場人物たちが動きまわるというものである。登場人物がオケのほうまで降りてくるところもあり、無観客配信で劇場が広く使えるということを最大限に活用しようとしているという印象を受けた。
ボストン・カメラータの演出では魔術師たちが地下道みたいなところで集会をする様子をロケで撮っていて活動家の集会みたいだったのだが、こちらでは魔女たちが黒い衣装にヘッドドレスをつけたゴスっぽい衣類で、むしろ『マクベス』の魔女たちみたいである。コーラスがオケの周りに散って動きながら魔女の笑い声をかなり派手に表現している。ここは非常に動きのある場面で、音楽と演出があっていてなかなか良かった。
全体的には面白かったのだが、とくに魔女の場面などはけっこう照明が暗くて見えづらいところもあり、撮影には少し改善の余地があるのかもと思う。あとびっくりしたのは無観客のカーテンコールで、ひとりひとり歌手が出てきて挨拶するのだが、観客がいないもんで全く拍手がなく、水を打ったように静かである。ここはむしろ不気味だった。