リッキー・アレンによるミュージカルTreasonの配信を見た。火薬陰謀事件を主題とする歴史ものである。50分くらいのコンサート形式の上演で、まだワークショップ公演の段階のものである。
明らかに『ハミルトン』の影響下にある作品で、非白人のキャストをたくさん使って歴史的な事件を新しい角度から描こうという試みである。リズムは非常に重視しているのだが、サウンドは『ハミルトン』みたいなヒップホップよりはブリテン諸島の民謡の影響を強く受けているようだ。火薬陰謀事件というのは英国史の中では非常にコントロヴァーシャルなトピックなのだが、カトリック弾圧やジェームズ王のいい加減な政治に対する批判といった問題をわりと現在の差別や暴政につなげる感じでまとめようとしているようで、最後はテロでは暴力の連鎖が起きるばかりで根本的な解決がもたらされないという落とし方になっており、このままきちんとうまく発展させられればなかなか面白くなりそうだ。ただ、まだちょっと短くてワークショップ段階なので、女性陣の役柄が小さくて付け足しみたいに見えるし、ジェームズ王の同性愛などがほのめかしだけであんまりきちんと出てこない。このへんは充実させる必要があると思う。
