けっこう上演が難しい戯曲なのでは…『冬のライオン』

 森新太郎演出『冬のライオン』を見てきた。ジェームズ・ゴールドマン作の戯曲で、既に何度も上演され、映画化・ドラマ化もされている作品である。

www.thelioninwinter.jp

 中世を舞台にヘンリー2世(佐々木蔵之介)とアキテーヌ領主エレノア(高畑淳子)の夫妻、その息子であるリチャード(加藤和樹)、ジェフリー(永島敬三)、ジョン(浅利陽介)、フランス王フィリップ(水田航生)、その妹でヘンリーの愛人であるアレー(葵わかな)が繰り広げる、王位をめぐる愛憎にまみれた諍いを描いた作品である。ヘンリーとエレノアはフランス王女アレーを息子の婚約者として引き取ったのだが、ヘンリーがアレーを愛人にして手放したがらないため、アレーの結婚と持参金として持ってきた領地の行方が息子たちの関心事になっている。エレノアがリチャード、ヘンリーがジョンを贔屓にしているため、王位継承をめぐる問題はこじれにこじれている。このあたりの王位継承をめぐる問題は史実に基づいているが、かなり脚色はある作品である。

 全体的に笑うところもあれば悲しいところもあり、憎み合いつつ完全に嫌いにもなれない家族のトラブルが生き生きと描かれた作品だし、役者陣の演技も達者で面白く見られる。ただ、初めて舞台で見てみて、実はこれはかなり上演が難しい戯曲なのでは…という印象を受けた。何しろこの作品は中世の王位をめぐる争いがテーマということで、現代人には聞き慣れない相続やら持参金やらの話が出てくるのだが、一方で展開はほぼ現代の家族劇みたいなスタイルで進む。アメリカの劇作家が書いているということもあり、たまにシェイクスピア風の壮大な台詞や笑いがはさまれている以外は、ユージン・オニールとかアーサー・ミラーとかオーガスト・ウィルソンあたりのアメリカの偉大な家庭劇に近い感じの作品である。何しろ中世だというのにクリスマスツリー(そんなものは中世に無い)をみんなで飾って祝日に集まったせいで家族同士の争いが…という内容で、ものすごく展開がアメリカ的だ。

 そうなると、演出は中世の政治劇っぽくするか、現代の家庭劇っぽくするか、どうやって統一感を出すべきなのかというところが問題になってくる。この演出は折衷的で、セットをちょっと中世のお城風にしている一方、王子たちはかなり現代風でかつ性格のわかる衣装を着ており、国王夫妻はちょっと古風だがまあ現代と言えるか…というような服を着ている。クリスマスツリーやリースはかなり大きくて派手なものだ。セットと衣装の時代を変えるというのはこういう芝居としては効果的な方針であるように思うのだが、一方で男性陣と女性陣の衣類がミスマッチである気がした。エレノアの緑のドレスはちょっと大仰な気がするし、とくにアレーのピンクのドレスはあまりにもフォーマルで全然家庭劇っぽくない。息子たちの「晴れの日に帰省したので少しあらたまった衣類を」という感じのものに合わせて、女性陣も現代風の女物のスーツとか(エレノアはメルケルとかコンドリーザ・ライスが着てるような女物の高価なスーツを着ているタイプである気がする)、そこまで大仰でないドレスにしたほうがいいのではと思った。