アンドレア・アーノルド監督の新作Birdを見てきた。
12歳のベイリー(ニキヤ・アダムズ)は若い父親バグ(バリー・キョーガン)に引き取られて暮らしている。バグはカエルからあやしげなドラッグを作る商売に手を出しており、さらに土曜日に新しいガールフレンドと結婚すると宣言する。父親の電撃結婚に不満なベイリーは、バードと名乗るふしぎな男(フランツ・ロゴフスキ)に出会う。
とにかくベイリーが暮らしている状況は相当に深刻である。バグは14歳くらいの時にベイリーの兄ハンター(ジェイソン・ブダ)の父親になったそうで、まだ若いが養わないといけない子どもが複数いる…のに定職にはついていないようで、あやしい仕事をしている。ベイリーが住んでいる家はものすごいボロ集合住宅でほとんどプライバシーもないし、犯罪も横行している。さらにベイリーは今は一緒に暮らしていない母親のボーイフレンドから虐待を受けていたようで、母親と一緒に暮らしている小さな弟妹が新しいボーイフレンドに虐待を受けていないかどうかも心配しないといけない。
こういう深刻な状況を描いてはいるのだが、暗い映画ではない…というか、ユーモアはいたるところにあるし、バードとベイリーの交流はいろいろ哀しいところはあるが明るい雰囲気で描かれているし、最後のバグの結婚式は楽しい場面になっている。全体的にとても演技がしっかりしている映画なのだが、とくにバグを演じるバリー・キョーガンはさすがである。全身タトゥーでオシャレした伊達男のバグは無責任な問題だらけの父親なのだが、子どもを虐待するようなことはしないし、自分なりのやり方で家族や友人を愛してはいる。最初にバグが出てくるところはとがった音楽とともにスクーターでベイリーをのせて疾走するというスピード感のある場面である。終盤にも似たような場面があるのだが、そこではバグが商売のために聴き始めたいわゆるおっさんロック(dad rock)をかけており、娘に突っ込まれて「まあこういうのも最近はいいと思うんだよ!」みたいな返しをしていて、これはバグが自分なりにお父さんらしくしようとしていることを面白おかしく表現しているのだろうと思う。なお、途中で「マーダー・オン・ザ・ダンスフロア」に関する楽屋オチみたいなジョークやキョーガンによる半裸のダンスなどもあり、どう見ても『ソルトバーン』ネタだと思う。
