ボード・ガシュ・エナジー劇場で『&ジュリエット』を見てきた。ウェストエンドで当たったミュージカルの巡業である。デイヴィッド・ウェスト・リード台本、ルーク・シェパード演出で、1990年代末以降くらいのヒット曲中心のジュークボックスミュージカルである。
お話は『ロミオとジュリエット』の結末に、ウィリアム・シェイクスピア(ジェイ・マクギネス)の妻でストラットフォード=アポン=エイヴォンから芝居を見に出てきたアン・ハサウェイ(ララ・デニング)がケチをつけるところから始まる。ジュリエット(ジェラルディン・サクダラン)がひとりだけ生き残り、乳母(サンドラ・マーヴィン)やノンバイナリの同年代の友達メイ(ジョーダン・ブローチ)と一緒に家出してパリに行くという展開を提案する。一応その方向性に沿って劇中劇が進むのだが、あまりの改変ぶりに不満を持ったウィリアムはロミオ(ジャック・ダンソン)を生き返らせるという強行手段に出る。この話はいったいどこに行くのか…
一応『ロミオとジュリエット』初演時という設定になっているが、親が子どもに結婚などを強要しようとするあたり以外はほぼ現代…というか、パーティはクラブみたいなところでバカ騒ぎだし、パリにはエッフェル塔やムーラン・ルージュがあるし、若者たちの行動もほぼ現代っ子だ。現代っぽい美術やファッションも、ウィリアムがアンに田舎の家の管理や子育てを任せっきりにしており、それに不満なアンがジュリエットを自立させようとするという展開も、近世もののモダナイズした再解釈という点では『SIX』にちょっと似ている。最後はロミオとジュリエットが「一目惚れで結婚ではなくこの後どうなるかは別としてお互いをよく知るところから始めましょう」みたいになり、劇中の年配カップルは結ばれる一方、ウィリアムもアンに謝って再出発ということで、『マンマ・ミーア!』みたいな感じになる。『ロミオとジュリエット』を現代の感覚で見ると気になりそうなところにまんべんなくツッコんでおり、歌も踊りも満載で、シェイクスピアの楽しい読み替え作品だ。
歌についてはブリトニー・スピアーズがけっこう使われているのだが、ブリトニーの歌って美しく華やかに聴かせるのは思ったよりも難しいんだな…と思った。とくにデュエットにすると、低いほうを歌う人は大変なのに聴かせどころが少なくて余計難しく聞こえる。ジュリエットの最後の見せ場であるケイティ・ペリーの「ロア」はブリトニーの歌に比べるとかなり歌いやすく、大盛り上がりでシングアロングしているお客さんもいた。なお、会場はほぼ満員で、若い女性がたくさん来ていた上、学校で観劇に来ているクラスもあった。