新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

まあ普通に面白いが、ギミックは全然効いてない~SPAC『ハムレット』

 SPACで上田久美子演出『ハムレット』を見てきた。チケットは招待である。

 舞台を覆う巨大ビニルシートみたいなものがあるだけで、家具などはほぼ無いセットである。舞台後部のほうではこのシートが上からぶら下がっていていて紗幕みたいに機能している。登場人物は全員現代っぽい服装だし、セリフもわりと現代風にくだけた調子にしている。

 ハムレット(山崎皓司)に後のことを託され、唯一生き残ったホレイシオ(本多麻紀)が皆さんにハムレットの物語を説明するという枠が一応あり、最初に前説みたいな感じでお話の内容の説明がある。これは地元の高校生とかも見に来ることを想定しているのだと思われるので、わかりやすくする工夫としてはわりと効果的だと思う。芝居じたいは基本的にかなりフツー…というか、かなり大胆なカット(ローゼンクランツはクビになったようでカット…)があるがまあまあオーソドックスな『ハムレット』である。

 このストレートに『ハムレット』をやっているところはけっこう面白いし、調度品がほぼ無いのにうまく役者を動かしている。ハムレットがクローディアス(武石守正)と勘違いしてポローニアス(若宮羊市)を刺してしまうところは紗幕みたいなビニルシートを上手に使っている。ガートルード(舘野百代)が最後に毒杯を飲んでしまうところは、みんながハムレットとレアティーズ(杉山賢)の乱闘に気を取られているうちにガートルードが酒を手に取って離れたところに行き、そのまんま飲んで手遅れ…みたいな感じでかなりスピーディな流れがある。

 しかしながら、コンセプトに基づいたギミックをやっているところは全然、話の面白さに貢献していない。チラシによると、女性の視点を…ということで最初に多人数のオフィーリアが出てくるのだが、その後オフィーリアの役柄がめちゃくちゃ拡大されるとか新解釈されるというわけでもなく、最後はむしろセリフがカット気味だったりして、これはほぼ機能していない。また、これまたチラシによると人間中心主義を脱すべく、役者たちが最初に草を演じよう!ということで草に扮したりするのだが、これも効いていない。というか、緊張している時は聴衆がかぼちゃだと思え、みたいなことをパブリックスピーキングの世界ではよく言うので、単にそれの変奏かなんかみたいに見え、人間中心主義とか植物の重要性みたいなコンセプトはお客からすると全然よくわからないし、別にそれで何か面白くなっているわけでもないように思った。このコンセプト系ギミックは全部とっぱらってしまってもうちょっとカットを減らして『ハムレット』をやったほうが単純に面白いのでは…と思った。