スタントン(8)~ちょっとカットしすぎなQ1版『ハムレット』

 ブラックフライアーズ学会の企画で、近くのメアリー・ボールドウィン大学の学生劇団であるステッドファスト・シェイクスピア・カンパニーが上演するQ1版『ハムレット』が上演された。ブラックフライアーズ劇場の本公演終了後、23時からの上演というすごく遅いプログラムである。

 ファースト・クォートことQ1は1603年に出た『ハムレット』のテクストで、非常に短く、来歴があやしいものである。Q1にもとづく上演は既に日本で一度見たことあるのだが、バッド・クォートなどと言われている一方、全く上演できないようなひどいものというわけではない。とくにガートルードの役割などは通常の版よりはっきりしているので、私はQ1のホレイシオがガートルードにハムレットの動静を報告する場面は他の版でも上演に入れるべきだと思っている。

 この上演は1時間で『ハムレット』をダイジェストみたいに上演するというものなのだが、正直、わかりやすいというには短すぎる気がした。非常に少ないキャストでやっているので、人を減らすためカットしすぎと思えるところが多い。とくに劇中劇が抽象化されすぎていて誰が誰を殺したのか考えないとよくわからないし、またポローニアスの死体が出てこないのでやっぱり誰が死んだのか判断しにくいというところも難点だ。『ハムレット』を読んだことがない人が初見でわかる上演かというとちょっと疑問である。

 あと、ほぼオールフィメールで若い学生なのに、クローディアス/先王の亡霊のみ男性、というキャスティングはちょっと違和感があった。こういうキャスティングをするからには意味を持たせる必要があると思うのだが、そのへんがあんまりはっきりしていないように思えた。