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飲み過ぎから始まる依存症ホラー~『WEAPONS ウェポンズ』(ネタバレあり)

 ザック・クレッガー監督『WEAPONS ウェポンズ』を見た。

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 ペンシルヴェニア州の田舎町メイブルックで、真夜中の2:17にある小学校クラスの子どもたちが1人を除いて全員家から走り出して忽然と消えるという怪事件が発生する。クラス担任だったジャスティン(ジュリア・ガーナー)は町の人たちから責められ、唯一クラスで残っていたアレックス(キャリー・クリストファー)と話そうとするが学校に阻まれる。一方、息子がいなくなって苦しんでいる町の建設業者アーチャー(ジョシュ・ブローリン)は独自に調査を始めるが…

 非常によくできたホラーで、発想も面白いし、群像劇的に視点人物を固定したエピソードを組み合わせてだんだん少しずつ謎が明らかになっていくという構成もうまい。最初はわりと展開がゆっくりなのだが、この盛り上げ方も絶妙で、たるいとか遅いというような感じが全然ない。また、笑えるところがけっこうあり、最後は古典コメディ映画『キートンのセブン・チャンス』をちょっと思い出した…のと、『パフューム ある人殺しの物語』も思い浮かんだ。

 アメリカの田舎町のイヤな感じをうまく表現しているということではスティーヴン・キングの後継者という感じで、ちょっと学校での銃乱射事件なんかを想起させるところもあるのだが、その中でかなり前面に出てきているのが依存症の問題である。序盤からジャスティンが酒屋に行って酒を買うところが頻繁に映されており、ジャスティンがたぶんもともと飲酒問題を抱えていて(前の勤め先でも直接酒乱に関するものではないらしいが問題を起こしていたらしいことが示唆されている)、子ども失踪事件のせいでこの傾向がひどくなっており、そのせいであまり賢明とは言えない行動をとっているらしいことが示唆される。ジャスティンと浮気するダメ男警官のポール(オールデン・エアエンライク)はアルコール依存症の後遺症で自助グループに通っているがサボり気味らしい。さらにこの種の映画としてはけっこうリアルに町の浮浪者でクラックの依存症と思われるジェームズ(オースティン・エイブラムズ)のその日暮らしが描かれている。ジェームズもポールもえらいことになり、ジャスティンは一応助かるものの大変な目にあうので、全体的にドラッグ(酒を含む)はダメ、絶対!みたいな話に見える。酒の飲み過ぎで人間関係のトラブルを起こし続け、ひどい目にあうが最後は生き延びるファイナルガール…というのはなかなかホラーでは変わり種であるような気もするのだが、『X エックス』三部作のマキシーンあたりからけっこうそういう傾向が流行っているような気はする。

 とはいえ、ネタバレになるが、一番「依存症」なのはグラディスおばさん(エイミー・マディガン)…だろうと思う。あまり詳しくは言わないが、グラディスおばさんは強いやつをどんどん摂取しないと保たなくなる状況に陥っていると思われ、最強最悪の依存症に陥っていると言える。たぶんこの映画では魔術も依存性物質の一種で、アメリカの田舎町に横行している依存の悪循環みたいなものをホラー化していると言えるのかもしれない。