『そんな彼なら捨てちゃえば?』(ネタバレあり)

 一昨日見た映画の続きということで、『そんな彼なら捨てちゃえば?』。

 で、とにかく私はこれはすごい面白いと思ったのだが、一方で非常に悪意を感じる映画だとも思った。

 どういうところに悪意を感じるっていうと、この映画には基本的に5人の女と4人の男が出てくるのだが、その中で最も容姿が美しいと思われるアンナ(スカーレット・ヨハンソン)とジャニーン(ジェニファー・コネリー)がやっぱり最も容姿がいいと思われるベン(ブラッドリー・クーパー。アンナに「"dry hump"したくなるお尻だ」とか言われてたじたじ)を取り合って共倒れするというのがまたリアルだしかつ観客に邪な喜びを与えようとしていると思ったからである。アンナは、あまり対女性では容姿がパッとしない(みんなから「女性よりもゲイ受けする」と言われている)が成功したビジネスマンでいい人であるコナー(ケヴィン・コノリー)に真剣に惚れられているのだが、結局コナーとは真剣になれないという理由でフッって、妻のジャニーンとも別れないベンとも別れてインドに自分探しの旅に行ってしまう。イケメン資源に美人が集中して資源獲得競争が発生する→周りの男性に美人資源が回ってこなくなるというのは、性別は逆になることもあるがよくある現象だと思うので(ゲーム理論だ!いや、全然違うっけ…?)、これは大変リアルだと思った。しかし、スカーレット・ヨハンソンは最近こんな役ばっかりなんだけど(『マッチポイント』では殺害され、『ブーリン家の姉妹』ではナタリー・ポートマンに男を取られ、『それでも恋するバルセロナ』ではさっぱり成長しない人の役)、アメリカ映画はスカーレット・ヨハンソンのちょっと魔性気味な美貌をちゃんと使い切れてないんじゃないだろうか…

 ただ、この映画の本筋はジジ(ジェニファー・グッドウィン)とアレックス(ジャスティン・ロング)の恋模様なのだが、まあこれがこのジジが恋愛がヘタすぎる。人のことを言えた筋合いではないが、メフィストフェレスさんも言っているように、ジジは脈の読み違えが非常に激しい人で、デートの後電話してこない人でも「忙しいのかも…」「番号をなくしたのかも…」とか思って希望を持ってしまい、そのせいで失敗ばかりしている。で、アレックスに「こういう男はその気がない」とかいろいろ教えてもらうのだが、結局いろいろあってアレックスと恋に落ちる。

 …で、思ったのだが、ジジがしているような脈の読み違えって、以下の二点が成立している人でないとしないんじゃないかと思う。

(1) 小さい頃からある程度モテた。

(2) 同性の友人がある程度いる。


 …なぜかっていうと、私、小さい頃から不細工で人付き合いが悪くてみんなから男と間違われていて全くモテなかったんだけど、そのせいで映画に出てくるみたいに母親から「あの子があんたに意地悪するのは好きだからだよ」とか、そういうことを言われた覚えが全くないのである。また、私には昔から一匹狼かつ少数精鋭主義で同性の友人がほとんどおらず(というか、そもそもあまり友人がいなかった)、恋愛問題についてそこまで同性の友人とたくさん話す機会がなかったので、「一度会った相手が電話をしてこなくても大丈夫だ」とかそんなようなことを同性の友人から吹き込まれた覚えが全くない。私の観察では、こういう場合、あまり恋愛にヴィジョンを抱かないまま大人になるので、恋愛の駆け引きにおいて無慈悲になって長じてbitchになる気がする…のだが、観察のサンプル人数が3人くらいしかいないのでよくわからない。


 まあ、この映画には愉快な小ネタもいっぱいある。最初に世界の女性たちが男の噂をする様子が映し出されるのだが、日本の女性陣の日本語が全くヘン…なのはまあちょっと問題だと思うのものの、途中でドキュメンタリー風にそこらへんの男女の恋愛談義が入るあたり、ちょっと工夫してある。あと、主要キャストの一人(かなり出番が少ないが)のメアリー(ドリュー・バリモア)がゲイマガジンのやり手の広報担当で、社中では唯一のストレート女なのだが、恋愛の進展について周りのゲイの同僚が興味津々で事あるごとに作戦会議をしているというのもおかしい。

 ちなみに、こういう女性向けラブコメディにしては選曲にガールポップが少なくて、セクシーな男性ヴォーカルばかりなところがなかなか題材にあわせてある(女ポップスはコリーヌ・リー・ベイリーとリリー・アレンくらい。あとはブラック・クロウズマルーン5にエルヴィス)。最後に流れるザ・キュアーの"Friday I'm in Love"は久しぶりに聴いたけど相変わらずいい曲だなと思う。


 ありし日のキュアー(いや、ごめん、今でも活動してます)。キュアーのロバート・スミスは、私の中ではデスキャブのベン・ギバードと並んで「声だけならステキなのにねぇ…」ヴォーカル。