グローブ座『ハムレット』〜小規模だがスピーディで若々しく、非常に好み

 本年初グローブ、『ハムレット』。全席ソールドアウトで高い席しか残っておらず、しかも残ってた席はやたらまぶしくてちょっと見づらいというよろしくない環境だったのだが(マチネでかんかん照りだった)、内容は非常に良かったと思う。

 
 たった8人の役者でとっかえひっかえハムレットをやるというのはかなり無理があり(クローディアスと先王の亡霊がダブルキャストというのはいいと思うが)、途中で「おいおいおい…」と思うようなところもいくつかあったり(ホレイシオが太ってて陽気すぎるとか…)、こんなに大きい野外舞台でそういうオフウェストエンドっぽい小規模で地味な上演をやるのははたしてあってるんだろうかという気もしたのだが、全体的に演出は非常にシンプルで明晰でかつコミカルな感じで好感が持てた(普通そこ笑わないだろっていうところでも笑いが起きてた)。劇中劇の演出とかはいくつか疑問点もあるがかなり斬新。こじんまりしすぎていて趣味でないという人もいると思うが、初心者にはかなりおすすめできるわかりやすい内容だったと思う。


 とりあえず一番のおすすめポイントは若い主役二人がとにかくとても良いこと。ハムレット役のジョシュア・マクガイアはすごく小柄なのだが(オフィーリアより小さい)、とてもエネルギッシュ。そこらの大学に通ってる若者みたいな感じで非常に親近感があり、見ているお客さんの中でも若い客はかなり喜んでいたように思う(前の立ち見席にいた全員刺青のパンクにいちゃんがかたずをのんで決闘場面を見守ってた)。オフィーリア役のジェイド・アヌーカは芯は強いのに繊細な若い女性という感じがよく出ており、ハムレットと絡む場面の若いカップルぶりはまるでロミオとジュリエットみたいだと思った。こういう若いハムレットとオフィーリアもいいんじゃないかな…日本で藤原竜也鈴木杏の『ハムレット』を見たときも若々しくていいと思ったのだが、マクガイアとアヌーカは生身の肉体の存在感で引っ張っていく感じの藤原・鈴木コンビよりももうちょっと「演技で作り込む」感というか、芝居に安定感があったと思う。客のほうは落ち着いてじっくり主役二人の演技を堪能することができるのだが、お涙頂戴に走っているわけではないのになぜかいつもそこはかとなく哀切な雰囲気が漂う芝居で、そのへんがぐっとくる。


 今年のグローブは『ハムレット』の他に『終わりよければすべてよし』『お気に召すまま』『空騒ぎ』をやることになっており、シェイクスピア以外にもマーロウとかをかける予定らしいので楽しみ。