あわれヨリック、墓場がほぼ全面カット~座・高円寺2『ハムレット』

 座・高円寺2でREBORNプロデュース『ハムレット』を見てきた。正直、かなりパッとしない上演だった。

 ほとんど何もないシンプルな舞台で、影をうまく使ったカラフルな照明はよい…のだが、テキレジがとにかく全然ダメである。2時間にカットしたスピード感のある上演なのは良いのだが、なんと墓場の場面がほぼ全面カットだ。なんかハムレット(設楽馴)とレアティーズ(友岡靖雄)がどうも言い争っているような様子を暗示するセリフのない短い場面があるのだが、ハムレットがかつて宮廷道化師だったヨリックの骸骨を見て死に思いを馳せたり、オフィーリアの死を知ってショックを受ける場面が一切ない。この場面はハムレットの心境の変化を説明する上で大変重要なところなので、正直、墓場の場面なしで『ハムレット』をやって何が面白いのかよくわからない。あわれヨリック、全面カットである。

 さらにこんな重要場面がカットされているわりに、レアティーズがオフィーリアに手紙を出す原作にない場面(これがなくてもレアティーズがオフィーリアを思っていることはわかるので蛇足だと思う)があったり、尺をのばすだけのダンスが入ったりする。とくに劇団が到着するところで、ダンスカンパニーがひとくさり踊ってその後すぐ引っ込んでしまうところは一体何をしたかったのか全然わからなかった。このカンパニーが劇団のメンバーだというなら、舞台にとどまってその後の場面にかかわらないとダメだろう。全体的にダンスは全部いらない。

 あと、これは演出にもソーシャルディスタンシングを取り入れているのかもしれないが、オフィーリア(覚田すみれ)がポローニアス(調布大)にハムレットの奇行を報告するところで、オフィーリアとポローニアスを舞台の両脇においてスポットをあてて、観客に向かってしゃべらせるのはやめたほうがいいと思う。これだといわゆる日本の演劇にありがちな、前を向いてただ役者が叫んでる的な演出になってしまって陳腐だし、この場面では父と娘が向かい合ってきちんと相談しあう様子を見せたほうがはるかに効果的なはずだ。あと、ポローニアスの衣装が良くない…というか、赤いガウン姿で通しているのだが、このガウンがいまいちなんだかバスローブで出かけてるみたいに見える。比較的きちんとした性格のポローニアスみたいに見えたので、もうちょっとバスローブに見えない衣装にしたほうがいい。