ドンマーウェアハウス座、ジョージ・ファーカー作『募兵将校』〜ちょっと戯曲が古いか、でもマイクロフト出演!

 ドンマーウェアハウス座でジョージ・ファーカー作の王政復古喜劇の有名作『募兵将校』(The Recruiting Officer、『徴募士官』とかもあってあまりタイトルの訳は一定してないのかも)を見てきた。これはシュルーズベリに新兵を集めにやってきたプルームとその友人である地元の郷士ワージーがそれぞれの恋人シルヴィアとメリンダ(2人とも女相続人)と結ばれるまでのすったもんだを描いたコメディである。

 …で、そんなに悪くはないがそんなにいいというわけでもなかった。王政復古喜劇を舞台で見るのは初めてだったのでとても楽しみにしていたせいで期待しすぎたかもしれない。とりあえず戯曲が古くなっているというか諷刺が手ぬるいというか、個々の台詞はテンポもよく笑えるところがたくさんあるのだが、全体としては話の密度が薄い感じだったと思う。プルームと部下のカイトがあの手この手で徴兵する様子を諷刺を交えて面白おかしく描いているのだが、なんかヴェトナムやらイランやアフガニスタンやらのためにアメリカが行っている徴兵をニュースで見ている現代人にはああいう徴兵の描き方はかなり手ぬるくて諷刺も足りないし、なんであんなことをしている人たちが良く描かれるのか、という気になってしまっても仕方ないと思う。あとシルヴィアがいきなり男装して入隊しようとするあたりとかもちょっとどうしてそうなるのかあまり判然としないし…

 ただ役者陣はすごくいいし音楽をふんだんに使った演出もすごく気が利いてて、戯曲の古さをカバーしようと頑張ってるなという気はしたので、見ている間は十分楽しめた。とくにfop(王政復古喜劇によく出てくるチャラ男キャラ)のブレイズンを演じたマーク・ゲイティスはとても良かった。ゲイティスといえば『シャーロック』の脚本家で実際にマイクロフトとして出演しているので有名だが、マイクロフトのあのつかみ所のない感じとはうって変わって派手派手でキランキランのチャラ男として出て来てすっかり場をさらってしまう。王政復古喜劇には楽しいfopの役柄がたくさんあるので、是非ゲイティスにはまたこういうチャラ男の役を舞台でやってほしい。